大罪の守護者
「とーちゃく」
「ふぅ……ある意味、間一髪じゃったな」
マーク・スフィアとクロムウェル・ベルガンテは、第二世界から第三世界の同胞の拠点に逃げて来ていた。
「遅かったな。傀儡師、老師」
「ただいまです、アブソリュートさん」
マークとクロムウェルを出迎えたのは、赤いマントの付いた漆黒の鎧を着たスケルトン。
彼女の名前は、アブソリュート・サタナー
元・第五世界の魔王で、『憤怒』の指輪を所持している。
「ちっとは老人を労らんか」
「仕事が遅いのが悪いのだ。我はもう実験も終え、第五世界を滅ぼしたぞ」
「それは儂とマークが実験しつつも、時間を稼いだからじゃろう。と言うか、滅ぼす必要は無かろう」
「我は魔王。ならば、征服しようが滅ぼそうが、自由のはずだ」
「も・と、魔王じゃろが」
会って早々に言い合いをするクロムウェルとアブソリュート。
そんな二人の言い争いは、後からやって少年によって止めさせられる。
「やめよ!その程度の事で言い争いをするとは、情けないぞ!」
「ぐぅぬぬ、確かにそれもそうじゃな」
「っく、そうよな。魔王たるもの、寛大にだな」
「それでいい。っと、マーク。居ながら何故、止めなかった」
二人を止めた少年は、二人の事を静観していたマークに問う。
問われたマークは、「だって、」と前置きをして答える。
「エーレさんが来ているのが見えたから。エーレさんが言う方が、効果あるしね」
「む、そうか。まあ、ならよし」
彼の名前は、エーレ・リッター
第四世界のとある国の元・騎士団長だった人物。正義感が強く、その正義が例え、他者から見たら悪だったとしても、己が信じた正義を貫く男。『暴食』の指輪を所持している。
「そう言えば、ホーエンハイムさんは?」
「クルフッフッフ、私なら初めからここに居ますよ?」
「うあ!びっくりした。何して居るんですか」
「なにって、透明化の魔法陣を試していたのですよ。結果は、音さえ出さなければ、気付かれないようですね」
ホーエンハイムと呼ばれた白衣を着た人物は、マークの質問に答えると何がおかしいのか、「クルフッフッフ」と笑う。
彼の名前はホーエンハイム・パダケルスス
第三世界出身の錬金術師。
『色欲』の指輪を所持している。
ホーエンハイムはひとしきり笑い終えると、ようやく本題を切り出した。
「ではでは、皆さんお揃いになられた事ですし、改めて報告会といきましょう」
「なら第一世界担当の私から。と言っても、身代わりを使って、時間稼ぎをしただけです」
マークが手を挙げて発言する。それに続いてクロムウェル、エーレ、アブソリュート、ホーエンハイムの順に話す。
「第二世界もほぼ同じく、時間稼ぎじゃな。ついでに、宝玉を利用した魔道実験も行ってきた。結果としては、理論上は可能。あとは質の良い石がいるかのぅ」
「第四世界は我ら死霊騎士団のもと、各国を制圧し統一をした。なお歯向かう者らは、問答無用に切り伏せている」
「第五世界は、我が滅ぼした。任されていた実験、分解・再構築についてだが……相当な量の魔力が必要となるが、可能だ」
「ここ第三世界は、皆さんの見ての通りです。実験については成功です」
そう言うとホーエンハイムは白衣のポケットから、赤い石を取り出した。
「ほぅ、それが例の賢者の石とな」
「クルフッフッフ…えぇ、第三世界の住人を使って完成させました。それにすべての実験の結果から、これであの方の計画が実行できることが証明されました」
嬉しそうに語るホーエンハイムだったが、「しかし、問題があるのだろう?」とアブソリュートに言われると、「その通りです」と言った。
「実は私たちの存在を、ゲームマスターたちに嗅ぎ付けられて……一人、逃げられました」
「あらら、どうするの?」
マークが訊ねると、ホーエンハイムはニヤリと笑い述べる。
「クルフッフッフ、まぁ考えてはある。そのために、キミたち守護者にも協力して貰いたいんだ」