マキナの新たな拠点
一方酒場でジークと別れたマキナは拠点へ戻っていた。
普通に考えれば拠点はその町の酒場か、自分のギルドホームにするだろう。だがマキナはギルドホームとは別に、今回の世界での拠点を作った。
マキナの拠点にしている場所、それはギルドホームを図書館にした時と同じように、好んで拠点にする事なく、今回に至っては入ると事すら難しい場所。それは……
「先生!帰って来て居るのは分かっているんですよ!大人しく出てきて下さい‼」
「リリスちゃん、そう怒らなくても良いじゃないかな?」
「シャロ。そう言うけどこの先生、授業は全くせずにフラフラと何処か行ってしまうのよ。居ると分かっている時に、教えて貰わないと今度何時居るのか分からないじゃない。それに今回は無策じゃないんだから」
「まーた、お前さんか。前も言ったろ?俺は授業を担当している訳じゃない。俺はこのヴィヴィド魔法学院の書庫・禁書庫の管理を任されているだけの教師だって」
そう、この学園都市ヴィヴィドに存在する魔法学院、その書庫を拠点としていたのだった。
学園都市ヴィヴィド
学園都市と言われる訳は単純で、各都市にはそれぞれ、学園がある。帝都デスパニアでは呪術魔法について、空都ベルカでは、精霊魔法について、古都アンジュでは古式魔法について、王都アイシルクでは現代魔法について専門的に教える学院がある。
これらの学院の支部と魔法研究の総本山となる学校、ヴィヴィド学院などの学校が集合している事から『学園都市』と言われている。
ジークが学院に入ろうとしたが駄目だったのにも理由がある。研究結果の流出を防ぐ為だ。
しかし情報の流出を防ごうとしているのになぜ、この様な都市を作ったのか?それは、お互いの都市が一年間でどれ程の成果を上げたかを発表するためだ。
その発表の場がここ、ヴィヴィドである。
この年に一回開かれる発表会では、ジークの様な学院に入る事の出来ない人たちや生徒たちが他校へ入る事が許される。この発表会の期間は学園都市全体が盛り上がる。つまり、一種のお祭りの期間であると言える。
因みに、ここでは発表された内容は危険度によって分けられるが、最終的に全てヴィヴィド学院の書庫か禁書庫に収められる。
さて、マキナがなぜ総本山たるヴィヴィド学院の書庫を拠点とし、教師となっているかについてだが…
「教師って肩書は、学院に居るうえであった方が便利だって理由で、理事長に付けられただけだし」
「前にも聞きました。でも曲がりなりにも教師の肩書を持っているなら、生徒のお願いを聞いて下さいよ」
ひょんな事から理事長と知り合い、成り行きで司書長を任されたのだ。
実際職も司書長だし、秘蔵の古書や魔導書が読めると言うので了承した。
そんな訳でマキナは現在ここを活動の拠点としていたのだった。