落下者は……
町に到着して直ぐに、マキナに酒場に来るようにメッセージを送った。
因みに先程、森で助けた人物はまだ、気を失ったままだ。
身なりからして、プレイヤーのようだ。
初めはシロかと思っていたが、よく見てみると違った。
白髪ではあるが、髪はセミショートの獣耳、肌は褐色ではなく色白、何よりシロよりも胸がある。
仕方ないから連れて来たのだが、一体いつになったら気が付くのやら……
取りあえず、酒場に行こう。
酒場に着くと既にマキナは、席に着いて酒を飲んでいた。
「やぁ、ジーク。初クエストは如何だった?」
「何か疲れたわ。モンスターが出ないから面白くねぇなって思ったら、今度は人が落ちて来るし」
あった事を簡単に話し、背負っていた女の子をイスに座らせた。
するとマキナは、座らせた女の子を見て驚くように聞いてきた。
「ん?ブラックちゃん!ジーク、ブラックちゃんに一体、何したんだい?」
「落ちて来たって、言っただろ。ひと先ずクエスト完了させて来るから、彼女を任せていいか」
「あぁ、行ってきなよ。それにしても、何があったんだか」
なんか、マキナの知り合いみたいだな。
まあ任せるとして、早く報酬を貰わないとな。
「悪い、待たせた」
「丁度いいタイミングだよ。ブラックちゃんが目を覚ましたところだよ」
「マキナさん、ちゃん付けって言い難くないですか?」
良かった、如何やら無事目を覚ましたな。
にしても、やっぱり知り合いだったのか。
「まぁまぁ、ひとまずお礼を言ったらどうだい?」
「そうでした。マキナさんに聞きました。助けて頂いたみたいで、ご迷惑をお掛けしました」
「無事で何よりだ。けど、何で落ちて来たんだ?」
本当に、それが不思議でしかなかったからな。
「それは…」
「その前に、二人とも自己紹介しなよ」
そう言えばしていなかったな。
「そうだな。俺は、ジーク。マキナとは、まぁ古い付き合いなんだ」
「そうなんですか。あ、僕はブラックって言います。マキナさんには、クエストの仲介をして貰っています」
マキナの奴、そんな事までしていたのかよ。
「さて、ジークは上手くクエストを終えたようだね。で貰えたかい、契約石は?」
「おう、でもどうやって使うんだ?レシピには、こんなのは乗ってなかったが?」
マキナに勧められてやったが、よく考えると、今使えるレシピの中には、契約石を使った物はなかった。
「そりゃあ無いだろうね。裏ワザ使うのだもの。まぁ、それは後で教えてやるよ。それより、ブラックちゃんの事だ」
そう言うとマキナは、ブラックの方に視線を向けた。
「確か、帝国に行って来るって聞いていたけど、何があったの?」
「実は、帝国に行ったんですが、軍の人たちに捕まっちゃいまして、契約の森の神樹に吊るされちゃったんです。その後脱出しようと、考えずに縄を切っちゃって」
「で、落ちて来たと」
「恥ずかしながら…」
と、ブラックが話した。
それにしても、あの大きな木は神樹だったのか。
道理で、やたらとデカい訳だ。
「あ~、となるとあの文献は本当なのかな?」
ブラックの話を聞いていたマキナが、何かを思い出した様だ。
「文献って、何の事だよ、マキナ」
「いや実はね、ジークに話したストーリーの続きになるんだけど、この第一世界は『人間の世界』がテーマらしいんだけど、テール共和国は獣人の国だったらしいんだよ」
するとマキナは、調べて分かっている限りの事を話し出した。