5話
2006年5月9日
午前7時30分
「時間だ、各車配置につけ!」
90式の車長席で戦車隊長桐村健吾大佐がそう言うと国防陸軍所属の戦車は次々に前に進み、市街地に散会する。
一方、韓国軍の陣地でも………
「よし、撃って、撃って、撃ち進め!日帝を引き潰せ!」
戦車大隊の隊長らしき男がそう叫ぶとK-1戦車が次々と前に進み、夏の深緑に染まりつつある大分市の郊外へと舗装道路の上を無限軌道を進める。
これを感付いていた国防陸軍はすでに待ち伏せ戦術で数の不利を質で補う準備を終え、対戦車ロケットを持った兵士がすでに街中へ配置し、戦車隊も散会していたのである。
「照準よし…………ってぇー!」
ある二等軍曹がそう言うと身を隠していた彼の部下である上等兵が無反動砲を敵戦車に放ち、またすぐに身を隠す。そしてまた別の箇所から同じ叫び声が聴こえ、爆煙と発射音が轟く。
更にしばらくすると74式戦車が瓦礫の合間から照準をK-1戦車に照準を定める。
そして砲撃を浴びせて即座に退却、瓦礫と土煙の街へ消える。
上空に飛来した韓国軍のAH-1G攻撃ヘリはサーモ装置で見つけ出したヘルファイアを放ち、これを撃破するに至った。
が、地上の国防軍兵士もすぐにそれに気が付き、即座に肩持式地対空誘導弾である91式地対空誘導弾をAH-1GやMi-24攻撃ヘリへと放つ。
そして91式の弾体がAH-1GやMi-24の胴体中央部に直撃すると同機はコントロールを喪失。機体は炎上とスピンしながら田んぼへと落下していく。
だがヘリが落とされようが韓国軍の戦車隊は延々と前に進み続けていたので、市内の74及び90式戦車は瓦礫の中で待ち伏せしていた。
「来たぞ、戦闘用意!」
斥候兵がそう言うと待ち伏せの為に待機していた大分県軍所属74式や同甲、乙及び国防陸軍に所属する90式や74式丙型戦車が舗装された道を無限軌道を転がし、瓦礫の街中を進む。
日韓両国の戦車と戦車が合間見舞えると、その周囲を雷の様な雷鳴の様な轟音が響き渡り、火山の噴煙の様な爆煙に覆い尽くされ、大声で呻く歩兵から流れ出る血の湖が形成される。
そしてその人間だったものは建物にもへばりついていた。
数時間後、戦闘が終わった大分市街地は完全に瓦礫の山と化しており、占領こそ失敗したが韓国軍の目論みは成功したのである。
市街地の破壊という韓国側の狙いが………
無論、日本側も着々と反撃計画を練っていた。