4話
2006年5月9日
福岡及び大分県境
午前3時30分
静寂を裂く様にヘリのローター音が向こうから響き渡り、2機の大型ヘリが地上へ降り立つ。
「敵輸送ヘリ複数を確認!」
国防軍の一等軍曹が無線に対してそう言った次の瞬間、上空から聞き慣れたAH-1攻撃ヘリのローター音が聞こえて来たので彼が上を向くと、そのヘリは機銃掃射を加えて来たのである。
(気が付かれたか!?)
彼はそう思いつつ、部下の上等兵と共に山林を一気に走る。
それに対しコブラは容赦なく機銃掃射を加え、続いてTOWと呼ばれる対戦車誘導弾を放つ。
「来るぞぉ!!」
一等軍曹がそう叫ぶと二人はうつ伏せになって身を隠す。
そして彼らは何とかミサイルに吹き飛ばされずに済んだが、もう1機のコブラが彼らを見つけ出し、機銃を放つ。
すると一等軍曹は下半身を、上等兵は上半身を撃ち抜かれて絶命し、輸送ヘリから降り立った歩兵たちは我が物顔で福岡市から遅れて到着した国産歩兵装甲車と合流する。
韓国兵はほとんど無人となった国道沿いの市街地や田園を勝ち誇ったかの様に進軍し、大分市内へ向けて進もうとしていた。
大分市郊外日本国防軍陣地
「第1、3、7斥候隊がやられました。敵はなおも侵攻中!」
無線士がそう言うと現地司令の大分県軍少将の滝嶋梁は自ら戦車へ乗り込み、出撃に備える。
「敵部隊、第1防衛線突破!」
そう無線士が言うと滝嶋はすぐに「プランB!各戦車隊は市街地へ展開、敵襲来に備えよ!」と命じ、自らの乗車も進める。
合計16両の74式及び90式戦車が無限軌道を転がして国道を福岡との県境へと進み、それに続くかの様に戦車によく似てる89式兵員戦闘車及び装輪式の87式偵察警戒車が進み、計36両の96式兵員輸送車や73式装甲車及び水陸両用装甲車や軽装甲機動車がそれに続く。
更にしばらくするとこの戦車部隊の上空を制空迷彩が施された海軍所属のA/O/V-8B攻撃/観測機6機とそれに護衛された同数のV-22輸送機に、森林迷彩が施された国防陸軍所属の各8機のAH-64D及び海軍向けAH-64D攻撃ヘリに護衛された合計16機のCH-47JA及びUH-60JA輸送ヘリに8機のACH-24攻撃/輸送ヘリとOH-1偵察ヘリが通り過ぎ、最後に計16機のAH-1攻撃ヘリ及びUH-1輸送ヘリが通り過ぎる。
4時過ぎ、遂に各ヘリから空挺隊員たちが鮮やかな識別用の煙を曳きながら降下していく。
そしてハリアーや攻撃ヘリから次々に対地制圧用ロケットや誘導弾が放たれ、韓国陸軍の潜むエリアを制圧する。だが彼らも一方的にやられている訳でも無く、韓国兵はすぐにミストラル及び国産の神弓携帯式地対空誘導弾で応戦、ハインド及びイロコイ3機とコブラ2機、ブラックホークに加えてチヌークにオスプレイとハリアーを各1機撃墜し、更にアパッチ1機を大きく損傷させて戦線離脱させたのである。そして降下した空挺隊員たちに韓国兵たちは旧北部軍のRPG-7で応戦し、3名が早速死亡し、6名が負傷したので上空援護を要請するも、携帯式地対空誘導弾の脅威下での攻撃を躊躇っていると突如、向こうから戦車砲から放たれた弾丸が飛来。2名の歩兵が死亡し、11名の歩兵が負傷する。
夜が明けつつあるなか、韓国陸軍の戦車隊がこちらへと迫っていたのであった。
とは言えまずは対空ミサイルの陣地を制圧する必要があり、その任務には生存性と火力が大きいアパッチに託され、すぐに行動に移ったアパッチはヘルファイアミサイルを放つと即座に陣地上空から離脱したのである。
そしてヘルファイアミサイルは陣地の歩兵を焼き払い、携帯式地対空誘導弾を破壊して脅威を排除したと思われたが、次の瞬間、ハリアーの搭載するレーダーが福岡空港からF-5戦闘機が飛来したのを確認し、7機のハリアーは即座にAIM-120を放ち、ヘリは一斉に離脱する。
ハリアーのミサイルは3機のF-5を撃墜したが、5機のF-5が20㍉機銃やAIM-9Lを用いてこちらのヘリ5機を撃墜、ハリアーも1機撃墜し、こちらの機甲部隊へと向かう対戦車用のロケットやミサイルを搭載したA-4Kを突入し易くする。
無論、こちらの上空援護の戦闘機もすぐに駆け付け、上空でかつての北海道動乱や東部戦線真っ青な激しいドッグファイトが展開される。
新田原から駆け付けた大分及び宮崎、福岡県空軍のF-16は合計8機はBVRC用の自律誘導式空対空ミサイルである99式空対空誘導弾AMRAAMでF-5にアウトレンジ攻撃を加え、護衛のいなくなったA-4に対しては90式空対空誘導弾をハリアーと共に放ち、制空権を何とか確保した。
そして夜明けと同時に韓国側の機甲部隊による全面攻撃が開始され、ここに九州動乱最大の戦車戦が開始したのである。