20話
2006年5月28日早朝
大分市沖
BBG-001扶桑
戦闘指揮所
「目標との位置調整完了。95式榴弾装填急げ!」
砲雷長の元で砲術長の片村賢少佐が言うと砲術員がタッチ式のスクリーンに情報を入力すると主砲身にさっきの榴弾が装填され、砲身が仰角を上げて射撃に備える。
……………しばらくの静寂が戦闘指揮所を包み込むが、やがてその静寂を裂くように「砲撃開始!」と砲術長が叫ぶと雷鳴の様な轟音と共に46cm砲が傲然と火を噴く。
航海艦橋
「すごいな…………」
防弾硝子の貼られたものの、衝撃で揺れる窓の外に広がる爆炎を見ながら航海長である一般水兵からの叩き上げである俺、宿村兵次少佐がそう呟く。
そしてその数十秒後には砲弾が大分市内にある韓国軍施設に炸裂し、多数の装甲車や兵舎、そして弾薬を焼き払い、爆炎が基地を包み込む。
恐らく多くさっきの爆風に飲まれた多くの敵兵が焼き払われている事を考えると、少しばかりか彼らに同情したくなったが、その感情を押し殺す。それから数時間後には黒煙に包まれている大分市に地上の宮崎や大分に鹿児島の県軍所属の装甲車が突入すると兵士達が飛び出し、。
遂に大分県の全面奪還作戦が開始されたのである。
同じころ、最終決戦の準備を終えた原子力戦艦長門及び同巡洋戦艦那智、赤城の3隻の原子力戦艦は護衛にイージス巡洋艦鳥海、ミサイル巡洋艦旗風、雪風型ミサイル駆逐艦の数少ない生き残りである太刀風に、1955年就役で、1999年のモスクワ軍縮協議以降は予備艦籍にあったが、日韓戦争の開戦で急きょ現役に復帰した紫陽花型駆逐艦の最終ロットである山桜とはなに新進気鋭で大きさはかつての5500t型に匹敵する汎用巡洋艦で、戦後型艦隊型駆逐艦の究極形態とも言える村雨型汎用巡洋艦の村雨、春雨、電、雷に、その先代である駆逐艦朝霧、夕霧、瀬戸霧に加え、主力駆逐艦や巡洋艦を支援する沿岸防衛駆逐艦である阿武隈型駆逐艦阿武隈、神通、大淀が東シナ海の領海接続水域で広範囲に渡って輪形陣を組み、韓国艦隊との決戦に備えていた。
無論、その上空では空母翔鶴から鹿屋基地へ派遣されていた空対空装備のラファル及びF/A-18A~DないしF/A-18E/F両戦闘攻撃機とF-14EJ戦闘機が韓国海軍所属の航空攻撃部隊の襲来に備えて艦隊防衛任務のために飛び回っていた。
一方、高知空港から飛び立ったC-1及びC-130両戦術輸送機からも地上の装甲車から飛び出す兵士達と同様に一斉に輸送機の後部ハッチから第一空挺隊員が地上へと飛び降りる。
山口県北部上空
「アルファ1よりアルファ、ベータ、ガンマの爆撃中隊及び護衛機の各機に告ぐ。これより我々は敵制空権下に突入する……………心してかかれ!」
そう爆撃部隊の指揮官である三岳大佐が言うと一斉に隊員達は覚悟を決めて了解と続く。
そして爆撃隊の露払いである護衛戦闘機であるF-15及びF-2 両戦闘機は一気に加速して編隊から分離し、敵航空部隊のいる方角へ向かう。
『サンダークラウドより各爆撃機及び戦闘機部隊に告ぐ、敵機の種類が判明した。F-15Kだ、決して油断をする事の無いよう!』
そうサンダークラウド早期警戒管制機の管制官がそう言うとF-15Jで構成された制空隊を率いる少佐である俺、野木原武雄が「了解した。アロー及びストーム両中隊は敵戦闘機隊を抑え、デーモン、クロス両中隊は爆撃隊の援護を継続せよ!!」と続き、他の中隊を率いる中隊長も『了解!!』と同意し、自らの任務へ就くべく、俺が率いる2つの中隊は前に出て、もう2つの中隊が爆撃隊の周囲を空母艦隊における空母の周囲を守る駆逐艦のように爆撃機を輪形陣で護るべく全ての航空機が配置に就いたのである。
地上で、海上で、上空で、いよいよ、北九州を数週間に渡って占領している韓国軍に対して日本軍事史上、最大級の反攻作戦の幕が開けようとしていた…………