19話
2006年5月26日明け方
玄海灘沖合い数㌔
韓国海軍の福岡方面占領部隊の司令部でもある空母漢江はここで錨を下ろしていた。
……………同海域水中
潜水艦夕潮
艦内中央部発令所
「潜望鏡深度まで浮上!」
満潮の艦長である俺、赤村武中佐がそう言うと航海長が浮上する様にを命じる。
すると船はゆっくりと上がり始めると潜望鏡が上がる。
だが、1分もしない内にESMに水上レーダーであろう波長の電波が観測され、俺は即座に潜航命令を下し、船はすぐに潜り始める。
(恐らく敵は俺らを捉えた可能性がある。とは言え、海底の地形や海流に関する情報を持っているのでこちらがある程度は有利だが……………)
俺はそう思いつつ、船首方向に装備されたコンソールの1つである円形のソナー用のスクリーンを睨む。
そこには自分の位置から下の方に1隻の大型艦や多数の中型艦が表示されている。
コーン…………コーン…………コーン…………コーン…………
駆逐艦から発せられるソナー音が響く中、俺は小声で「取り舵一杯!」と命じると操舵手の村口勇一海曹が「取り舵一杯!」と小声で復唱すると少しづつ船は右へと曲がり始める。
とは言え敵艦の数は圧倒的に多く、やがてはソナーの反射波がこの船を捉えるであろう。だが俺にはこれに対する秘策があった。
「敵艦はまだ後から追ってきているな?」
俺がそう聞くとソナー手は「はい。敵駆逐艦は未だ本艦の斜め後方を航行中です」と言った次の瞬間、俺はすぐに4門の魚雷発射管にあるモノが収納されたカプセルを装填するように命じる。するとそのあるモノが入った8つのカプセルは4門の魚雷発射管に装填され、発射の時を待つ。
そしてその数秒後、俺が発射命令を下すと4門の発射管から放たれた8つのカプセルは水面上へと向けてゆっくりと浮上する。そして直下を夕潮が潜り抜け終えると4つのカプセルは一斉に水中で開き、あるモノは海面へとバラつきながらも浮上する。
水面上
黒く光ったあるモノは水面へ顔を覗かし、中のタイマーは刻一刻と爆発までの時を刻んでいた。
そう、そのカプセルから出たあるモノの正体とは音響受信式の機雷である、そう、これこそが夕潮が駆逐艦からの追撃をかわす為に考え出した秘策であった。
韓国海軍某駆逐艦艦橋
「…………艦長っ!前方に機雷原です!!」
そう監視員の少尉が叫ぶと艦長の大佐はすぐに船を後進一杯させるように命じ、操舵手は急いで推進器を逆回転させて後進させようとするが、機関のレスポンスが遅く、船はしばらく前に進み続けたが何とか逆回転を始めて後進を始めようとした、次の瞬間だった。1つの機雷が突如、爆発による衝撃波によってその駆逐艦の推進軸をへし折られ、その艦は前にも後ろにも進まなくなる。
更には機関室は既に水蒸気に包まれて何人も寄せ付けない空間となっており、その水蒸気が老朽化していた船体の劣化を激しく進ませて船内の亀裂を広げていく。
それから5分後、韓国兵たちが最も恐れていた事態が発生したのである。
水蒸気爆発。そう、水蒸気に包まれた機関室で巨大な爆発が発生し、その際に発生した爆風は船体の至る所を引き裂いて破壊して飲み込んでいく。
30秒もしないうちにその駆逐艦は真っ二つとなって海中へと引き込まれていく。
轟沈。それ以上にもそれ以下にも言いようの沈み方であった。
そしてその機雷原は沈みゆく駆逐艦で発生した爆発音により次々と連鎖的に爆発、韓国海軍は残っていたKDX-1、2級駆逐艦による夕潮追撃を検討していたが、この爆発によってそれも無しとなったのである。
だが、これだけで日本側の反撃は終わらなかった。
そう陸上に展開していた対艦ミサイル連隊が熊本からSSM-1を放ち、4発のASM-1を搭載した空軍のF-2”ゼロ・ファルコン”及び海軍のラファル戦闘攻撃機による漢江撃沈作戦が開始されたのである。
一方、北九州沖に到着した原子力戦艦扶桑による統制と空母翔鶴搭載機による防空支援もあって強襲揚陸艦日向と戦車輸送艦大隅、下北による上陸作戦は成功に終わり、北九州方面占領司令部を制圧し、幕僚や司令を束縛。
彼らを捕虜にした事実を韓国政府へ公表。それに加えて北九州方面を占領していた韓国軍はこちらの大陸上戦力と富嶽爆撃隊が向かっている事も知らずに彼らの友軍と合流すべく福岡市へと向かっていた。