16話
2006年5月21日暁前
佐賀県東部を多数の韓国兵が乗る兵員装甲車が進んでいた。
目標は日本側が何とか奪還した長崎県北部を再度占領することだ。
上空には多数のF-5E戦闘機やMiG-23戦闘爆撃機や護衛のKF/A-29神鳥戦闘攻撃機が飛翔し、地上軍の兵士たちを力付けていた。
対する我が国防陸軍は唐津市の奪還後、佐賀県西部で塹壕戦に備えて韓国空軍の空襲で破壊された市街地などに塹壕を始めとした陣地を構築していた。
塹壕とは言っているが、本格的な地下司令部や移動式対空及び砲兵警戒用レーダーを高尾山や夕日山などの唐津市周辺の山岳地帯に分散して設営し、各種対空誘導弾発射機や05試57mm自走高射砲なども偽装用の網で完全に被われていた。
つまり16日に国防陸軍空挺隊が唐津市を奪還した後に国防陸軍設営していたのは塹壕と言う名の要塞であるのだ。
閑話休題。
夕日山対空警戒レーダーが多数の韓国空軍機を捉えると瞬時にその情報は高尾山総合司令部に伝わり、旧市街地の至るところに配備されていた遠隔操作式のVADS20㍉高射砲が一斉に仰角を上げて空を睨む。
総合地下司令部
「各VADS攻撃開始せよ!」
唐津市防衛部隊の司令である宮瀬大佐がレーダースコープ上で敵が近距離に迫るとそう命じて多数の操作員が射撃ボタンを押し、それに地上のVADSが連動して一斉に射撃を開始する。
ダダダダダダダダダ……………と言う轟音と共にF-106に搭載されていたバルカン砲を流用したVADS対空防衛システムが耳を裂くような音ともに火を噴き、空を引き裂くような弾幕の壁を形成し、爆撃部隊所属のMiG-23を火達磨にして撃墜し、爆撃の阻止を試みる。まだ友軍戦闘機は到着しないであろう。
故にこの防空機関砲が地上の国防軍兵士にとって頼れる傘であった、だが韓国空軍もただでやられる訳も無く、すぐに反撃を開始する。機関砲による機銃掃射や爆撃用に持ってきた対地ミサイルや国産のレーザー誘導爆弾による大規模制圧などが行われ、更地となった市街地だったエリアに更なる破壊がもたらされたのである。そして高尾山周辺への爆撃も行われ、運悪く司令部も破壊されてしまい、宮瀬大佐以下唐津市防衛部隊の司令部も壊滅してしまったのである。
無論、地上に配備されていた05試57mm高射砲や地対空ミサイル発射機も吹き飛ばされ、人員に関しても唐津市防衛部隊は壊滅し、韓国軍は一時的とは言え目的である唐津市の再占領に成功したのである。
そしてこれが北部九州戦争での韓国側にとって最後の組織的な勝利となるのであった。とは言えこの後、わが国防陸軍は思わぬ伏兵とも戦う事になるのであった。