15話
2006年5月20日正午
熊本県菊池市
「防空レーダーに反応あり!」
レーダー員の下士官がそう言うとミサイル運用長の少佐は「対空戦闘用意!」と続く。
すると箱形のミサイル発射機が一斉に仰角を上げて空を睨む。
「敵航空機、ミサイルレンジへ侵入しました!」
レーダー員がそう報告すると運命長がミサイル発射を命じる。
やがてゴォオオオオー!と耳を裂くような爆音が轟き、ミサイルが箱形発射機の蓋を貫き上空へ向かうとレーダー誘導装置によって敵のいるであろうと思われる方角へと誘導される。
とは言えミサイルによって撃墜出来た敵機は少なく、残った敵機は菊池市上空へ侵入し、空挺降下を開始したのである。
無論、地上には多数の対空機銃群が設置され、それらが放つ無数の弾幕が降下してくる敵兵や上空の輸送機やSu-25襲撃機に襲いかかる。
無論、Su-25は襲いかかる対空砲火を鎮圧すべく急降下して機銃掃射を仕掛けようとする。
と、その時だった。空中で何かが炸裂すると雷鳴に似た轟音が鳴り響き、Su-25の機体が砕け散り、輸送機も砕け散る。
またしばらくすると無限軌道でステルス性を凝らした角ばった砲塔を持つ装甲車が熊本市の方から到着したのであった。
因みに同車の砲塔の後部にはなんとななめ45°の角度で前方向きにガス圧で打ち上げる携帯式地対空誘導弾の発射機が備え付けられ、必要があればこれで超音速目標を撃ち落とすのである。
さてそれはさておき57㍉対空砲は多数の輸送機や襲撃機を血祭りに上げ、地上に対しては敵兵掃射の任務を実施していた。
無論、RPG-7で撃破された車両もいくつかあるが、戦車無き戦場での歩兵戦闘車や対空自走砲の意義を証明したのである。
そして菊池市中央部では激しい銃撃戦が展開され、郊外では国防陸軍の歩兵部隊が戦車などの各種機甲部隊が韓国軍の空挺兵や空挺車両と交戦していた。
無論、両陣営一歩も譲らず激しい死闘を繰り広げていた。
一方、福岡南部及び熊本北部上空ではF-15J及びF-2を中心とした戦闘機4種8個中隊48機が計10個中隊60機のKF/A-29及びMiG-29、FA-50、F-16各戦闘機に対して数的な劣勢をもろともせずに果敢に空戦に挑んでいた。
「アロー1、フォックス1!」
少佐の俺、野木原武雄がそう言うとミサイル発射ボタンを強く押すと99式空対空誘導弾が愛機の胴体側面のミサイルアタッチメントから斜め下方へ弾き出されて目標へ向け飛翔する。そして僚機からもAAM-4が次々に放たれていく。
F-15とF-2が放ったAAM-4と言う青空を切り裂く最新鋭の矢はさっそく敵編隊に大きな混乱をもたらし、その隙とばかりに2個中隊のF-15と1個中隊のF-2が敵の死角に切り込んだ。
たとえ少数でも敵が切り込んでくれば、混乱を招く。
1機のF-15がKF/A-29を挑発するとその機はHigh Gバレルロールと呼ばれる機動と同時に大量の赤外線欺瞞閃光弾をばら蒔き、KF/A-29のミサイルを回避すると太陽の方角へさっきのF-2は急上昇し、しばらくして宙返りしてKF/A-29の背後に位置したのである。
あるKF/A-29操縦室
『しまった!後につかれた!』
KF/A-29の操縦士、金凜海少佐がそう言うと彼は機体を急加速させて上昇させ様とするが、F-15の放ったAAM-5が彼のKF/A-29の主翼を引き裂き、主翼を引き裂かれ、滑空能力を失った同機は地上へ螺旋状に落下していき、操縦士は機体から脱出したのが野木原少佐にも見えたので、すぐに彼は地上の友軍に対してその操縦士の救出を要請したのである。
だが、野木原はある事を3か月前に聞いていた。そう、向こうの規定では撃墜された操縦士は殺されてしまうだろうと言う話で、彼は彼なりの慈悲を持って保護してくれと要請したとも言える。
そして20分後、空戦が完全に終わると韓国軍の熊本空襲部隊は1個小隊3機のKF/A-29を残して壊滅していた。だが国防空軍も9機のPAG所属のF/T-18Bを喪失する被害を受けており、苦勝とも言えたのである。