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朱鴉のツバサ  作者: 織姫ナナ
第一章 朱鴉の産声
11/21

変革の日(5)

◆◆◆◆◆



「あなたは、世界をどう思う?」



 気がつくと、そこは箱庭だった。忠則は向かい合う少女に顔を向けた。白い髪に翡翠色の瞳。赤いワンピースを着た碧は、真剣な眼差しで忠則の言葉を待っている。



「どうって、言われてもなぁ」



 世界のことなんて特に何も考えていなかった忠則は、回答に困った。そもそもただの学生が世界のことなんて、考えるはずもない。



「じゃあ、質問を変えるわ。私のこと、どう思う?」



 思いもよらない質問に、忠則は驚いてしまった。初対面に近い少女を、どんな風に思っているかなんてそれこそ答えようがない。ただの印象でならば、かわいいほうだと忠則は答えられるが、それはどこか気恥ずかしさがある。



「あー」



 思わず後ろ髪を掻いてしまう忠則。印象で答えてもいいのか、それとも違う要素を含めて回答したほうがいいのか。いろいろと考えていると、一つの声が二人に放たれた。



「面白いことをしているわね」



 顔を向けると、レメリーが微笑んで近づいてきている。忠則は困ったような顔をして自分よりも小柄な少女に、助けを求めた。



「なあ、俺はどう答えればいい?」

「そうね。正直に言えばいいと思うわ」

「あのな、それができないから困っているんだぞ?」

「あら、どうして困っているのかしら?」



 レメリーはイジワルそうに笑みを浮かべた。どこか楽しんでいるようなそれは、とてもじゃないが心地いいものではない。



「あなたは、自分と向き合えないのかしら?」

「あのな、俺は――」

「もしかして、目の前にあるそれを、何かと勘違いしているの?」



 忠則は顔を向ける。すると碧は、怪しく微笑みを浮かべた。瞬間世界は赤黒く変化してしまう。忠則は思わず立ち上がった。そして、碧と思っていた存在に言葉をぶつける。



「お前、誰だ?」



 それは、正直に答える。



(アカ)



 朱は、忠則の後ろに立って答えた。あまりにも刹那的なできごとに、忠則の身体は追いつかない。振り向こうとするが、その瞬間に朱は忠則の背中に抱きついた。



『お前は我のもの』



 飲み込まれていく身体。赤黒い闇から逃れようとするが、忠則はどうすることもできない。



「忠則。時間をかけてでも、自分と向き合いなさい。そうすれば、あなたは運命を打ち破ることができる」



 レメリーの言葉。それを聞きながら、忠則は朱に飲み込まれていった。

 深い闇が、忠則の世界を支配する。どうしてこんな世界に引きずり込まれたのかわからない。しかし、異常に寂しいということだけはわかった。どうして自分はこんな所にいるのか。問いかけたいが、答えてくれそうな存在はいない。



『お前は一人。永遠に一人』



 強烈な眠気に襲われる忠則。このまま静かに眠ってしまおう、と考え始めてしまう。だがそれを許さない存在がいた。

 忠則の手に、温かな感触が現れた。思わず目を開くと、そこには白く輝く碧の姿が存在する。



『負けちゃだめ』



 碧は優しく忠則を抱き締めた。そして、世界を温かな白い光で染めていく。

 忠則は、そんな夢を見て朝を向かえた。


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