「絶望」という響き
俺は、座り込んだ美空を、立たせなければならないと思った。
ここはヤバイ。
一刻も早く、ここから逃げなければ…。
そんな考えが、頭の中をグルグル回っていた。
だが、頭とはウラハラに、身体はまったく動かなかった。
気がつけば、俺自身も、美空と同じように、その場に座り込んでいた。
俺たちの目の前には、顔が半分になった安達先生の死体があるだけだった…。
そのとき再び、廊下の前方の暗闇の中から、誰かの悲鳴が聞こえた。
おわあぁぁぁぁぁぁ…。
それは男性の声だったが、声に力はなく、弱々しい響きだった。
なんだか、その声には、「絶望」という響きが感じられるような気がした。
俺は、胃がキュッとなるのを感じた。
いったい誰の声だ⁉︎
あれも、先生の誰かなのか…?
そのときだった。
ギャァギャァギャァギャァ‼︎
という獣の叫びのようなものが聞こえたと思った瞬間、まるで火炎放射器のような、ものすごい炎が、廊下の向こうに見えたのだ。
その火炎によって、廊下が一気に明るくなった。
そして、俺たちは見た。
廊下のガラス窓を突き破り、巨大な恐竜のような生物が首をだし、猛烈な火を吹いているのを。
そして、その炎の先には、俺たちの担任の中井出先生がうずくまって、悲鳴を上げながら焼かれていた。