その姿は、かなりびびっているやつ
俺たちは、一階のロビーめざして階段を降りていった。
先頭は、アホの横山だ。
次に、美空さん。俺が、絶対に守ると(心の中で)誓った女子だ。
そして、最後尾に、俺がついた。
しんがりは、後ろからいきなり襲われたら、即やられてしまう可能性がある。
ポジショニングとしては、非常に危険だ。
だが、美空さんを守るためには、仕方がない。
俺は背後を警戒して、何度も何度も、後ろを振り返りながら歩いた。
すると、また横山が言い出した。
「あのよぉ、新久保。てめえ、そんなに後ろばかり気にしてたら、歩くのが遅れるだろ。そっちのほうが、ヤバイだろが」
「そ、そんなこと言っても、後ろを警戒するのが、しんがりの役目だろ?」
「警戒っても、限度があるんだよ! てめえのは警戒っていうより、ハハ、びびってるだけじゃね?」
こ、こいつ…。
許せん。
なにが、ハハ、だ。
美空さんの前で、俺をバカにして、自分をアピールしようとしているだけなのだ、こいつは。
「あの騎士をなめてたら、き、きみも、一瞬で死ぬぞ」
「はあ? 剣だろ? 弓矢じゃないんだから、一瞬って、また大袈裟な…」
「違う! あいつの剣は、本当に速いんだ」
「新久保、てめえ、ビビりすぎ? ねえ、美空さん。そんなに後ろばかり見られても、ねぇ?」
こいつ、もう許せん。
俺が、反論しようとした瞬間、
「新久保くんは、臆病なんかじゃないわ‼︎」
美空さんが、叫んでいた。
「だって…、だって、わたし見たもの…。新久保くんが、あの大きな騎士に立ち向かって行くのを。わたし、そのおかげで生きてるんだから…」
横山は、目をまるくして驚いている。
だが、横山以上に驚いていたのは、なにを隠そう、この俺だった。