ブヨブヨの怪物が合体したら…
「恐ろしいことが起きたって⁉︎ まさか、いまここに、男子がほとんどいないことと、それは関係あるのかしら?」
高田先生は、息を飲み込みながら、尋ねた。
稲田は、苦しそうに顔を歪めている。
「そうなんです。さっき言ったでしょう? ブヨブヨ狩りに夢中になったのは、ほとんどが男子でした。男子たちは、僕が止めるのも聞かず、ブヨブヨを追って、廊下に出ていました。そこで…」
「いったい、なにが起きたの?」
「ブヨブヨたちが、突然、何十匹も合体して、巨大なブヨブヨになったんです。
巨大化したブヨブヨは、それまでのブヨブヨとは、まったく性質の違う怪物になっていました。もう棒で叩いたくらいでは、なんのダメージも与えられませんでした。
その巨大なブヨブヨが、次々にみんなを飲み込んでしまったんです‼︎」
稲田は、そのときの恐怖感を思い出したのか、身体を抱えて震えはじめた。
「ブヨブヨに取り込まれると、みんなは生きたままブヨブヨと身体が同化していくんです。身体の半分以上が、ブヨブヨのブヨブヨした身体に混じったまま、それでも生きていて、泣きながら助けを求めるんです」
俺も高田先生も、ただ黙るしかなかった。
どうやら、三階には四階とはまったく違う怪物が出現したようだ。
「それで? 四階では、何が起きたんですか?」
今度は、稲田がこちらに尋ねる番だった。
俺と高田先生は、顔を見合わせた。
それから、高田先生が、四階で起こったことをかいつまんで話した。
稲田は、俺を見直したようだった。
「で、これからどうする?」
と、高田先生が、俺と稲田、どちらともなく、聞いた。
「私は、脱出するべきだと思うの。いつまでも、この廊下に立てこもっているわけにはいかないわ。私には、みんなを安全な場所まで連れて行く義務があるの」
安全な場所など、はたしてあるのだろうか?
俺はそう思ったが、あえて口にはださなかった。
そのかわりに、俺は言った。
「脱出するまえに、探さなければならないものがあります」
稲田と高田先生が、こちらを見た。
「イスマが召喚せし者です」