クラスでいちばんの美少女
廊下の灯りが消えた直後、目の前の部屋の中からバタンバタンと音がして、続いて女の子の悲鳴、横山らの叫びが聞こえてきた。
横山が、「なんだ⁉︎ 停電か? おい! 新久保! 新久保!」と俺を呼んでいる。
部屋のドアをあけていいものか、と思っていると(なにしろ、中で奴らがどんなかっこうをしているのかわからないし)、いきなりドアがあいて、案の定、上半身裸の横山が出てきた。
下は一応、制服のズボンをはいているが、ベルトはしまってなくだらんと垂れ下がっていて、◯ッキーマウスのパンツがほとんど見えている。
おいおい…。この部屋の中って、6人の男女が入ったよな。
俺は部屋に入った中に、クラスでもかわいいと言われている渡部真由がいたことを思い出し、むしろ哀しくなった…。
「てめえ、新久保! なんかあったらすぐメッセ入れろっつったろ!」
と、横山はムチャなことを言ってくる。まあ、いつものことだが。でも今日はなにか大事なことを邪魔されたせいか、いつにもまして理不尽に怒っているようだ。
「いや、いま急に停電したんだ…」
「なんで停電なんかするんだよっ⁉︎」
「そんなこと言われても…」
「わかんねぇなら、今すぐ調べてこいッ! いいな!」
そう言って、横山はバタンッとドアを閉めた。
なるほど。すぐにまたズボンを下ろせるように、あんな風にベルトをゆるめていたのだろう。
俺はまた、誰もいない、真っ暗な廊下に一人になった。
寒い…。
確かに、横山じゃなくても、この停電はいったいなんなんだ?と思う。
しかたがないので、俺は携帯電話の液晶のライトを電灯がわりに、そろそろと廊下を歩きはじめた。
たしか、廊下の先に階段があったはずだ。一つ上のフロアには教師たちがいるので、行けば何かわかるかもしれない。
そう思ってそろそろと歩いていると、携帯の灯りに、白いソックスが浮かび上がった。
クラスでいちばんの美少女、美空莉緒が立っていた。