楽勝だったぜ!
「新久保さんは、帝国をなめすぎです!」
岳彦はそう言うと、さらに先をうながした。
「帝国が、レジスタンスの内部に送り込んだスパイからの情報で、ぼくはイスマさんたちが、異界者と遭遇したことを知ったんです。それで、急遽このドリム城に来たんですよ。まさか、晩餐会の席に、いきなり現れるとは、思ってもいなかったですがね」
そう言って、岳彦は笑った。
笑うと、やはり中学生くらいに見えた。
不思議なやつだ、と俺は思った。
「そんなことより、ぼくを誘拐しようとしてる人たちのことを、詳しく教えてください」
「あ、 そうだった!」
岳彦が語る帝国スパイの話に夢中になって、あやうく忘れかけていた。
「そのレジスタンスのイスマたちが、この城に潜入するらしいんだ。俺たちの仲間の横山が、カラスに変身してやって来て、教えてくれたんだ」
「僕を庭に連れ出せば、彼らが誘拐すると?」
「ああ、そうだ。だけど、この警備では…」
俺は、また庭園のまわりを取り囲む護衛隊を見た。
どう考えても、あの護衛の隊列を避けて、この庭に入ってくることはできない。
と、思っていたら…
「ぜんぜん! 楽勝だったぜ!」
という声が聞こえた。
聞き覚えのある声だ。
俺は咄嗟に頭の上を見た。
そしたら、
「下だよ、下」
と、また声が聞こえた。