魔法皇帝
「詳しい話は、あとにしましょう。今はこの城を出ることが先決です」
岳彦は、そう言った。
まだ中学生なのに、俺より冷静だ。
「新久保さんたちのお連れが、この城に捕らわれているんですよね? まずは、その人たちを救出しなければ」
「三人いるんだ。でも、今は地下牢に入れられている」
「地下牢の場所は、わかりますか?」
「知ってるけど…みんな魔法の鎖に繋がれていて、行っても助け出せない」
俺がそう言うと、岳彦はくすりと笑った。
「ぼくは、この世界で、魔法皇帝と呼ばれてるんですよ。たぶん、そんな鎖、かんたんに外せます」
おおっ!
そうだった。
この中学生は、たった数年でこの世界を平定した、皇帝ドルムガルフその人なのだ。
俺は、急に百人力を得たような気がして、気が大きくなった。
こいつと一緒なら、本当に美空さんたちを助け出せるかもしれない。
「地下牢は、こっちだ!」
俺は、もう何度も行ったサーシャの館のほうを指さした。
「わかりました。急ぎましょう」
俺たちは、急いで地下牢に向かった。
しかし、簡単にはいかなかった。
地下牢の入口と、庭園のあいだに通路があって、そこに護衛隊の兵士たちが、びっしりと並んでいた。
「まずいな。入口は、あそこなんだが…。あれじゃ、あいつらに見つからずに入ることはムリだ…」