皇帝の裁可
「そもそも、このような反逆者の仲間を、皇帝陛下との晩餐会に同席させるとは、ドリアム将軍の見識を疑いますな」
皇帝の護衛隊長レオンハルト公は、ヘビのような目で、俺とドリアムを見つめた。
俺は、まさに、ヘビににらまれたカエル状態になっていた。
もはやテーブルの下で震える脚を隠すこともできない。
こ、殺される…‼︎
その恐怖だけが、胸のなかいっぱいに広がっていた。
が、ドリアムは顔色一つ変えない。
「こちらの学者の事情については、先ほど説明したとおりです。単に、ウインガーレイに利用されただけの被害者に過ぎない。それを反逆者とは、レオンハルト公も心配性だな」
「心配は当然のことだと思いますがな」
「一つ言っておくが、このアラクボとの会話をご所望されたのは、陛下だ。レオンハルト公の話を聞いていると、まるで陛下のご判断に異議を唱えているように思えるが、まさかそんなことは…」
「もちろん、そんなことはない」
レオンハルト公は、急いで言った。
「ただ、陛下に、ご判断の材料を提供したいだけだ」
「では、陛下にご裁可いただこう」
ドリアムがそう言うと、二人の将軍は同時に皇帝を見た。
どう見てもまだ少年の皇帝は、しかし少しも動じずに、
「いまの話を聞いて、朕はますますこの同年代の学者に興味をもった。はやく、庭へ行こう」
と言った。
レオンハルト公が、衝撃を受けたような顔をしていた。
ただし、すぐに皇帝は、付け足した。
「護衛隊は、庭の周りを固めよ。誰も入ってこれないように、また誰も出てはいけないように。しかし、庭の中に立ち入ることは厳禁とする」