ヘビのように光る目
「おまえの娘と、そこの学者を、朕に貸してくれ。もう少し話がしたい」
晩餐会も終わりに近づいてきたとき、皇帝がそう言った。
当然ながら、ドリアムに拒否などできるはずもない。
「かしこまりました」
ドリアムはそう言うと、サーシャと俺にうなずいてみせた。
それを見た皇帝は、すぐに立ち上がった。
「ドリアム、おまえの城の庭園は、とても見事だと聞いたぞ。そこで話がしたい。それでいいかな、二人は?」
なんということだ。
はからずも、皇帝のほうから庭に出ると言い出すとは。
俺は、横山に言われたミッションを思って、内心ドキドキとしていた。
が、すかさず、護衛隊長のラインハルト公が、口をはさんだ。
「それでは、護衛隊を庭園に配置しましょう」
「ダメだ、ラインハルト。それでは、そこの二人が自由な気分で話ができないではないか。朕は、二人と、本物の同世代の友人のように語り合いたいのだ」
皇帝は聞かなかった。
しかし、ラインハルト公は、慇懃な笑顔を浮かべて続けた。
「それでは陛下の安全が、保証できませんな」
「陛下の安全は、私が保証しましょう。この城の中は、安全です」
こんどは、すかさずドリアムが言った。
なるほど、二人はライバルらしい。
ドリアムは、露骨にラインハルトを睨みつけていた。
が、ラインハルトは、余裕たっぷりに続けた。
「おやおや、ドリアム将軍は、この城を安全とおっしゃるのですか? しかし、この城では、つい昨晩も、前領主にして帝国への反逆者、ウインガーレイの反乱が起こったと聞いておりますがな。おまけに、そちらのお若い学者さんも、その反乱の当事者だったとか?」
ラインハルト公はそう言って、俺を見てニヤリと笑った。
その目は、ヘビのように光っていた。