気詰まりな晩餐会
「彼は、異国からやって来ました」
ドリアムがそう言って、俺を紹介した。
俺は立ち上がり、日本式のお辞儀で挨拶をした。
もし皇帝が、俺たちと同じ世界から来たのなら、俺を見て、なにかの反応を示すだろう。
だが、皇帝は無表情のまま、なんの反応も示さなかった。
皇帝は、無言のまま、ただ食事を口に運びつづけた。
それとは対象的に、皇帝の隣、サーシャの隣にすわった男は、ほとんど食事に手をつけなかった。
代わりに、喋り続けた。
「ドリアム将軍のお嬢様が、このような美しい姫君だったとは、驚きましたな」
物腰はやわらかいが、蛇のような陰湿な瞳の人物だ。
さっきサーシャが話していた、レオンハルト公という人に違いない。
サーシャに声をかけてきた護衛隊の騎士の父親だ。
「ありがとうございます、近衛将軍様。ですが、わたしなど都の方々に比べれば、土臭い田舎娘にすぎませんわ。近衛将軍様くらい素敵な方ならば、きっと、まわりには、いい香りの美人がたくさんいるのでしょうね」
サーシャは、如才なく愛想笑いを浮かべて受け答えをしている。
俺よりも年下なのに、意外としっかりしているようだ。
レオンハルト公も、まんざらでもないようで、破顔一笑している。
「いやいや。都といえども、あなたほどの華人は、そういませんぞ。ドリアム候も、さぞ鼻が高いでしょうな」
しかし、皇帝はいっこうに会話には加わらなかった。
ドリアムもまた、そんなレオンハルト公の言葉を完全に無視していた。
なんとも気詰まりな時間は、こうして過ぎていった。
もう一本、小説を書き始めました。
『修学旅行に行ったらヘタレな俺がなぜか幕末のサムライに⁉︎』という小説です。
もしよければ、そちらもご一読ください。