緊張すると、お腹が痛くなるタイプ
「いったい、なにやってたの?」
食堂にもどった俺に、サーシャが言った。
怒りをとおりこして、ほとんど呆れたような表情だった。
「いや…その…緊張すると、お腹が痛くなるタイプなんだ…」
我ながら情けない言い訳だと思ったが、ほかに思いつかず、そう言った。
「いいから、さっさと席につきなさい。もう来られるわよ」
サーシャは、冷たく言った。
俺は急いで、サーシャとは、ドリアムをはさんで反対側の席についた。
あらためて食堂を見渡すと、さっきとはだいぶ様子が変わっている。
テーブルの上の燭台には火がともされ、ぼんやりと食堂を照らしていた。
テーブルの上には、簡単な食器とフォークやスプーンがすでに置かれ、コップも並んでいた。
壁際には、大勢の執事たちが、ずらりとならび、控えていた。
俺が椅子に座るときも、さりげなく椅子を引いてくれた。
たぶん、コップを軽く持つでけで、サッと水を入れてくれるのだろう。
「そんなにお腹痛いの? 顔が真っ青だよ…」
サーシャが、こんどはやや心配そうな声で聞いてきた。
「いや…もう…平気…」
俺は、途切れ途切れに返した。
たぶん、自分でも気づかないうちに、顔に出ていたのだろう。
さっき横山が言った、皇帝を庭に連れ出す、というミッションのことが、頭から離れなかった。
どう考えても、そんなことはできそうにない…。
もし、俺がなにもしなければ、イスマたちはどうするのだろう?
黙って引き返すのか…?
そんなことを考えているうちに、顔色が悪くなったのだ…。
そのとき、大食堂の入口が急に騒がしくなった。
「来たわ」
サーシャが囁いた。