近衞隊と第一隊
「あいつは、お父様のライバル、レオンハルト公の息子なの」
サーシャは、苦々しい顔で言った。
俺たちは、晩餐会の準備が進んでいる大食堂に向かっていた。
「ライバル?」
「レオンハルト公は、帝国の西に領地をもつ公爵で、帝国軍の精鋭である近衛隊を率いているわ。同じく精鋭部隊で、帝国軍の主力である第一軍を率いるお父様とは、帝国一の将軍の座を、いつも争っているの」
「第一軍と近衞隊か…」
「実戦での実績は、お父様のほうが圧倒的に勝っているのよ。でも、レオンハルト公は、いつも皇帝のおそばに仕えているから、取りいるのが上手いのよ」
めずらしくサーシャは饒舌にしゃべった。
ほんとに、あのイケメン騎士と、その父親が嫌いらしい。
「見えてきた。あそこだ」
サーシャが指さす先を見ると、ドリアムの居館と同じくらい大きな館が建っていた。
館の煙突からは煙がでていた。
「早くいきましょう。皇帝とその取り巻きたちも、もう着く頃だ」
俺たちは大食堂に急いだ。
大食堂には、ずらりと食器が並べられていた。
ただし、その食器の数は、思ったよりずっと少なかった。
俺は、皇帝の晩餐会というものは、何百人もがずらりと並んで、めしを食べるものと思っていたが、そうではなく、席は六人分く しかなかった。
「え? 晩餐会って、こんな少人数でやるの?」
思わず、俺が聞くと、
「当たり前だ。皇帝と食卓を囲むなんて、誰にでも許されることじゃない」
とサーシャがあきれたように言った。