貴様が仕える家の名は?
「そいつも皇帝の晩餐会に出るのか?」
イケメン騎士は、鋭くサーシャに聞いた。
もう笑っていなかった。
「皇帝の護衛官として、正体もわからない怪しい奴を、おそばに寄せるわけにはいかない」
騎士はそう言うと、俺のまえに立った。
さっきまでのヘラヘラした空気は消え、全身から殺気を出していた。
全身にまとった鎧と、腰にさげた大きな剣が、いやでも目についた。
「おまえ、何者だ?」
騎士は冷たい声で言った。
「ちょ、ちょっと…レイ! 言ったでしょ? お父様のお客さんよ。あんたがどうこう言うことじゃないわ」
あわててサーシャが横から口を出した。
だが、騎士はまったく動じなかった。
「ドリアム候の客といえど、皇帝のおそばに通すためには、身元の確認は当然のことだ」
そう言うと、あらためて俺を見て、
「貴様、どこの出身だ。騎士ならば、仕えている家名を言え!」
「か、家名?」
当然ながら、俺は口ごもってしまった…。
「お、俺は…」
「なんだ? 貴様、自分が仕えている家の名も言えんのか。怪しいな…」
「俺は…騎士じゃないんだ…」
「騎士じゃない? じゃあ、貴様は一体なんだ? 騎士でもない男が、なぜドリアム候の客になった?」
「俺は…」
異界から来たということを、この騎士に伝えてもいいのだろうか?
どうせ、皇帝に会えば、すぐわかることだ。いっそ、言ってしまおう…。
「俺は…」
俺が口をひらきかけた時だった。
「この人は、学者よ‼︎」
サーシャが、横からあわてて口をはさんだ。
「学者だと?」