そうとう厚かましいタイプ
「サーシャ! サーシャ!」
満面の笑顔で手をふる金髪のイケメン騎士を見て、サーシャは露骨に嫌な顔をした。
イケメン騎士は、そんなサーシャの様子に気づいているのか、いないのか、まったくひるむ様子もなく、駆け寄って来た。
「サーシャ! こんなに早く君に会えるなんて!」
イケメン騎士は、俺たちの前まで来ると、いきなりサーシャに熱いハグをした。
「ちょ、ちょっと…。やめてよ、レイノルズ!」
サーシャは身体をよじって、騎士の抱擁から抜け出した。
「あいかわらず、つれないな、サーシャは。でも、そんなクールなところが、きみの魅力なんだけどね」
サーシャから思い切り拒否られても、イケメン騎士はぜんぜん引かず、顔色ひとつ変えない。
どうやら、そうとう厚かましいタイプのようだ。
「我が陛下が、ドリムに行かれると聞いてから、君に会えるのを、ずっと待ち遠しくしていたのだよ」
「ごめんなさい、レイノルズ。私たち、急いでるの。その、あなたの陛下様とのお食事があるのよ。お先に失礼するわ」
「私たち?」
イケメン騎士は、急にシリアスな顔になった。
ジロリと、俺を見た。
その目は、サーシャに向けられた親密な視線とはまったく逆の、氷のように冷たいものだ。
「誰だ? そいつは?」
「ケイスケよ。私たち急ぐから、これでね」
そう言ってサーシャは、俺の腕をとった。
だが、イケメン騎士の顔は、もう笑っていなかった。
「そいつも皇帝との晩餐に出るってのか? そいつは、聞き逃せないな。皇帝の護衛官としてはね」