男子はどこへ?
声の主は、修学旅行の初日に、俺に廊下で見張りをさせた横山だった。
生きていたのか、こいつ…。
だが、いつも一緒につるんでいる錦戸と丸山の姿は見えない。
「てめえ、見張っとけって言ったのに、なにバックれてんだよぉ」
横山は、俺の襟首を掴んで、締めあげる。
とはいえ、あのドラゴンや騎士と対面していた後だけに、まるで怖さは感じなかった。
むしろ…
「てめえが合図もなしにバックれたおかげでよぉ、錦戸と丸山はよぉ…」
ああ…、やっぱり…。
横山は、手を離して、泣き崩れてしまった。
しかし、こいつはこんなときでも自己中心的なやつだな…。
バックれたもなにも、お前が先生に様子を聞きに行けと、俺に言ったんじゃないか。そのおかげで、俺は死にそうな目に…。
もっとも、三階にとどまっていても、結局は危なかったようだが。
ともあれ、泣き崩れる横山を尻目に、俺はバリケード内の様子を見回した。
そこは、宿泊施設の廊下だ。
中は、以外と狭い。
十五メートルくらい向こうに、こちらと同じようにベットが積まれ、バリケードができている。
そこには、二十人くらいの生徒がいた。
そこで俺は、初めて気がついた。
その場にいるほとんどが、女子だった。
男子は、俺と横山、それから最初に俺たちをバリケードの中に引っ張りこんでくれた稲田の三人だけだった。
女子たちは、みな疲れ果てて、廊下に座り込んでいる。
だいたい二三人ずつのグループに分かれているようだ。
美空も、そのうちの一つのグループに入って、座り込んでいる。
高田先生は、怪我をした生徒の治療にあたっていた。
治療といっても、シーツを破いた布切れを、包帯がわりにキズに巻いている程度だが。
廊下の窓には、シーツがカーテンのようにかけられていた。一部の窓は割れているらしく、シーツが風にはためいていた。
ほかの男子はいったい…?