ピカピカに磨いておけ!
ドリアムが、俺を眺めまわして、いきなり言った。
「サーシャ。おまえ、この男を風呂に入れてやりなさい」
「お父様!」
サーシャが、めずらしく反抗した。
「この男は…私の入浴を覗いたのですよ‼︎」
「ははは。べつにいいではないか。この者は、おまえに子種をさずけてくれる男なのだぞ」
ドリアムは笑ながらそう言うと、急に真剣な顔になって、
「皇帝が来るまでに、この男をピカピカに磨いておけ。その奇妙な服装も、できるだけ綺麗に整えておけよ。これは命令だ!」
と言った。
不思議なもので、命令となるとサーシャもすぐに態度をかえ、真面目な顔で、
「ハッ!」
と一礼した。
そのまま、ドリアムは居館のほうに立ち去った。
残された俺たちの間に、一瞬気詰まりな空気が流れた。
「我々はこっちだ!」
サーシャが、わざとらしいくらい事務的な声音でそう言うと、ドリアムの居館とはまたべつの館をさした。
そこがサーシャの居館なのだ。
俺たちは、館の裏手にある通用口に向かった。
迷路のような庭園のせいで、ぜんぜん気づいてなかったが、よく見ると、そこは地下牢に通じる入口のすぐ近くだった。
地下牢への入口は、ほんの五メートルほどのところに見えた。
あの下に、美空さんや高田先生、稲田たちが、まだ鎖につながれているのだ。
そういえば、彼らのところに向かった横山は、どうなったのだろう?
だが、そんなことを考える間もなく、サーシャに連れられて、俺は再びサーシャの館に入り、私室へと向かった。
サーシャの部屋に入ると、そこにはすでに数人の女中がいて、風呂の準備をしていた。