ヤバ過ぎる役割じゃないか!
「皇帝が予定より早くお着きになるそうです」
サーシャは、息をあえがせながら、そう伝えた。
だが、ドリアムは顔色ひとつ変えず、
「わかった。すぐ城に戻ろう」
と、足早に歩きはじめた。
サーシャも、そのあとを追いかける。
しかたがないので、俺も二人のあとについていった。
歩きながらも、俺はさっきのドリアムとの会話を思い出していた。
皇帝が、俺たちと同じ世界から来た人間であること(学生の可能性もある)。
しかも、その皇帝の背後に、姿を現さない魔術師が隠れているかもしれないこと。
その魔術師こそ、帝国の真の支配者かもしれないこと。
いずれも確証のない、ドリアムの推理に過ぎない話ではあるが、可能性は高そうに思えた…。
そして、もしドリアムの推理が正しければ、今夜開かれるという晩餐会で、俺を見た皇帝は、どんな反応をするのだろうか?
要するに、ドリアムは俺をおとりにして、皇帝の反応を探ろうとしているというわけだ…。
う〜む。
どう考えても、ヤバ過ぎる役割じゃないか…。
まさか、いきなり殺されたりはしないと思うが…。
そんなことを考えているうちにも、ドリアムたちは迷路のような庭園の中を、どんどん進んでいった。
ときには、道を外れて、草薮の中を突っ切ったりもした。
どうも、最短距離を進んでいるらしい。
さっき、サーシャが藪の中からいきなり現れたのも、こういうことだったのかもしれない。
やがて、さきほどの居館が見えてきた。
ふと、ドリアムが足を止める。
ふりかえって、俺をジロジロと眺めまわした。
いきなり、
「おまえ、皇帝に会うまえに、風呂に入ってこい」
と言った。
「サーシャ。おまえ、こいつを風呂に入れてやりなさい」
「お父様!」
サーシャが叫んだ。