聞かれてはいけない話
「皇帝に魔法を教えた男は、皇帝の影に隠れて表には出てこない。だが、そいつこそが、帝国の真の支配者だ‼︎」
ドリアムは一気に言い切った。
ここまで聞いて、俺ははじめて、ドリアムがなぜ俺と二人きりで話したがったのか、理解した。
これは、まさに皇帝のタブーに触れるような会話なのだ。
万が一、誰かに聞かれたら、おそらくドリアムとて、命はないだろう。
まして、俺なんて…。
「つ、つーか、なんで俺にそんな話を聞かせるんだ?」
「さっきも言ったように、今晩、皇帝がこの城に来られる。おまえも、晩餐をともにとるのだ。その席で、皇帝がおまえを見て、どうなさるか…?」
「それを見て、あんたどうする気なんだ?」
俺は、いちばん気になることを聞いた。
「私は…」
ドリアムがなにか答えようとした瞬間、
ガサガサッ
と草をかきわける音がした。
俺は心臓が止まるほど驚いて、あわてて音がしたほうを見た。
草をかきわけて、少女が姿を現した。
サーシャだった。
「お父様!」
「サーシャ⁉︎ なにをしている?」
さすが、ドリアムは顔色一つ変えずに、サーシャに問いかけた。
「レベトスと待てと言ったではないか?」
「それが…」
サーシャに、さっきの話を聞かれたのだろうか?
見たところ、彼女は急いで俺たちを探しにきたらしく、話を聞いたような素振りは感じられなかった。
だが、本当にそうなのか?
聞いてないふりをしている、とも考えられる。
だいたい、なぜ彼女は草の中から姿を見せたのか?
そんな疑問が頭をかけたが、サーシャの次の言葉で、すべてが吹き飛んでしまった。
「皇帝が、予定より早くお着きになるそうです。それで、レベトスに頼まれて、お父様を探しにきたの!」