バリケード
全力で階段まで走った俺たちは、大急ぎで階段をかけ下りると、三階の廊下に出た。
ついさっきまで、ここで見張りをやらされていたのだ。
まるで、何日も前のことのような気がする…。
三階のみんなは、無事なのだろうか?
三階には、俺のクラスメイトたちが、全員宿泊していたはずだ。
「見て‼︎」
美空が、指をさして叫んだ。
廊下の奥に、ベッドを積み重ねたバリケードが築かれていた。
どうやら、このフロアにも、異変は起こったらしい。
俺は、気分が一気に落ち込むのを感じた。
心のどこかに、三階に戻れば、いつのの日常に帰れるような、そんな幻想があったのかもしれない。
だが、どこにも逃げ場など、なかったのだ。
俺たちは、必死にバリケードまで走り、積み上がったベッドを叩いて、叫んだ。
「中に入れてくれ!」
「お願い! ここを開けて‼︎」
美空の泣き声が届いたのか、ベッドが動かされ、俺たちは中に入ることができた。
なぜかはわからないが、あの騎士は追いかけては来なかったようだ。
バリケードを開けてくれたのは、クラス委員の早田だった。
「おいっ、はやく!」
早田はすばやく俺たちをひっぱり込むと、急いでベッドを積み直し、バリケードをまたふさいだ。
バリケードの中には、十数人ほどの生徒がいた。
みな、いちように疲れた顔をしている。中には、服が破れたり、怪我をしている者もいた。
どうやら、ここも怪物に襲われたらしい…。
「美空〜!」
美空の友だちらしい女子が三人、泣きながら駆け寄ってきた。
手をとりあって泣いている。
ああ…。ここで美空ともお別れか…。
思い返せば、この俺が、クラスでいちばんの美少女と一緒にすごせたなんて、もう二度とないことなのかも…。怖かったけど。
最後に美空は、一瞬、俺のほうを見て、なにか言いかけたけれども、友だちにうながされて、すぐ奥のほうに去って行った。
高田先生は、すでに怪我をした生徒の様子をみている。
すると、
「おいっ、新久保てめえ!」
聞き覚えのある声がした。