おまえたちの世界の空は?
ドリアムは先に立って、ゆっくりと歩いていた。
俺は、やつの視線から隠れるように、なるべく真後ろを歩いていたので、その表情はわからなかった。
ドリアムの居館の裏には、広大な庭があった。
まるで公園のようによく整備された庭園だった。
が、俺たち以外に人影はなく、おそろしく寂しげな庭だった。
その庭園の、ちょうど中央付近に大きな噴水があった。
その噴水の前まで来たとき、突然、ドリアムはくるりと振り返り、俺を真正面から見据えた。
「おまえたちは、いったい何者なんだ?」
ドリアムは、いきなりそう問いかけた。
「え…。何者って…」
「おまえたちの世界には、このような庭園はあるのか? 噴水はあるのか? おまえたちの世界の空は、何色をしている?」
ドリアムは、俺にかまわず、次々と疑問を口にしていった。
それは、俺に対する質問であると同時に、自分自身への問いかけであるようにも見えた。
「私は、この大陸ではない、遠く海をへだてた別の大陸から来た人間も知っている。さきほど、おまえが会ったレベトスも、別の大陸から来た人間の一人だ。だが、おまえたちは、彼らとは根本的に違う。一体、異界とはなんだ?」
ドリアムは、一気にまくしたてると、燃えるような目で、俺の目を覗き込んだ。
俺の答えを待っているのだ。
不思議と、怖さは感じなかった。
たぶん、まわりに誰もいないせいだろう。
立場を超えて、ドリアムは率直に疑問を俺にぶつけているのだ。
そんな気がした。
「庭園は、ある。噴水も。空の色は、ここと同じく青だ」
答え始めると、もとの世界のことが頭に浮かび、自分でも意外なほど熱い気持ちがこみあげて、止まらなくなった。
「だが、俺たちの世界の庭園には、大勢の人がいる。噴水のまわりなんか、特にいろんな人たちがいる。遊んでいたり、人を待っていたり、ぼーっとしていたり、屋台で商売していたり…。俺たちの世界は、そんな世界だなんだ‼︎」