異様に凶悪な顔の男
「こんな男を、皇帝に引き合わせるというのですか⁉︎」
サーシャが、ものすごい剣幕で叫んだ。
「わたしには、お父様とも思えぬ軽はずみに見えます。この男は、つい先ほども、わたしの…」
そこで、彼女は言葉に詰まると、怒りの視線を俺に向けた。
ドリアムは、それを見てニヤニヤと笑っている。
「なんだ? 早くもおまえに子種を授けたのかな?」
ドリアムの下品な冗談に、サーシャは真っ赤になって、
「違います!」
う〜む…。
どうやら、かなり嫌われてしまったようだ。
ドリアムは、そんな娘を見て、さも愉快そうに笑っている。
が、急に真面目な顔になって、
「そういえば、異界者よ。貴様には、このレベトスは初めてだったな」
そう言って、かたわらに控えている小男をアゴで示した。
いかにも高価そうな着物を身にまとってはいるが、面相があまりにも凶悪な男は、しかし、静かに会釈した。
「レベトスと申します。ドリアム様にお仕えしている者です」
うやうやしい挨拶ではあったが、何者なのかは、まったくわからなかった。
サーシャの横顔をちらりと見たら、微妙に嫌な表情をしているような気がした。
「少し、庭を歩こう。貴様と話がしたい」
ドリアムがそう言って、異様に巨大な椅子から立ち上がった。
「サーシャよ。おまえは、ここでレベトスと待っていろ」
そう言うと、ドリアムはホールの入口とは反対側の扉に向かって歩きはじめた。