ドリアムの椅子
長い長い廊下の突き当たりの巨大なホールに、ドリアムがいた。
ホールの中心が階段状に高くなっていて、その上にドリアムが座っていた。
それは見たこともないほど巨大な椅子だった。
ドリアム自身が、本当に人間なのか?と思うほど大きな身体をしているのだが、椅子はさらに巨大で、もはや冗談なのかと思うくらいだ。
その背の部分の高さは、余裕で二階建ての家の屋根くらいの高さがあった。
ホールには、ドリアムと、もう一人しかいなかった。
もう一人は、ドリアムとは真逆で、小人かと思うほど小さかった。
着ているものはいかにも高価そうな、きらびやかな衣装だったが、顔は異様に悪虐な面貌をしていた。
彼は、ドリアムの真横に、後ろ手を組んで立っていた。
サーシャは無言のまま、椅子のまえに進むと、黙礼した。
そのサーシャを無視して、ドリアムはにやりと笑うと、
「また会ったな、異界者よ」
と言った。
初めて会ったときと同じ、まるで闇の中から響いてくる悪魔のような不吉な声音だった。
「私に、敵として三度対面した者はいなかったというのに、貴様とは何度目かな? よほどの悪運の持ち主と見える」
そう言って、薄く笑った。
その顔を見ていると、落合先生とウインガーレイ候が斬られたときのことが鮮明に思い出された。
「ふふふ。そう険しい顔をするな。私はほめているのだ。今日は、これから我が城に、ドルムガルフ帝が来られるのでな。貴様のような珍客を、食事に招いてやろうと思い、呼んだのだ」
「ドルムガルフ帝だって⁉︎ そ、それって、この世界の帝王…‼︎」