これが女子のデフォルト設定なのか?
「どうして、わたしがお風呂で寝てたことが、あんたにわかるのよ⁉︎ 覗いたんでしょ⁉︎ サイッテー‼︎」
サーシャは、そう叫んで、俺にビンタした。二発目の…。
「いや、それは…」
横山が魔法をかけたことを喋るわけにもいかない。
つい、言いよどんでしまう。
たしかにサーシャから見れば、かなり怪しい状況かもしれない…。
彼女は、露骨に俺を軽蔑したような眼差しで眺めていた。
なにしろ、こういう状況に慣れていないので、そういうふうに見られると、俺はなんだか自分が悪いような気さえしてきた。
「とりあえず着替えるから、あんたこの部屋から出てなさい」
サーシャはそう言い放つと、廊下を指さした。
完全にこちらを見下している視線だ。
さっきまで、恥ずかしそうに子種をくれ、とか言ってたくせに、なんという変わりよう…。
やっぱりお姫様だからワガママなのか?
それとも、これが女子のデフォルト設定なのか?
そんなことを考えつつ、しかたがないので俺は黙って廊下に出た。
廊下には、いつのまにか、あの女忍者みたいな女中が控えていた。
い、いつのまに…?
部屋に来るときには、たしかに誰もいなかったのに…。
もしかして、この女中に横山との会話を聞かれてないだろうな…。
そんな心配が頭をよぎった。
だが、女中は完全なる無表情で、廊下の端に片膝だてで座っている。
やがて、扉があいてサーシャが出てきた。
白いワンピースのような服を着ている。
「あら? イメルト」
サーシャは、女中に気づくと、声をかけた。
女中は、片膝立てのまま、
「侯爵様がお呼びです」
と言った。
それから、俺をにらみつけて、
「こちらの男性を、連れて来いとのご命令です」
と言った。