ビンタ二発目
カラスに変身して忍び込んだ横山の魔法によって、風呂場で眠り込んだサーシャをベッドに運んだ俺は、目覚めたサーシャに思い切りビンタされた。
「あんた、なにやってんのよ⁉︎」
「ち、違う…」
俺は必死で状況を説明しようとした。
が、サーシャは聞く耳持たない。
「いくら子種が必要だからって、寝ているあいだになんとかしようなんて…サイッテーよ!」
「それは誤解だ!!」
「この状況のどこが誤解なのよ⁉︎ この変態‼︎ 」
「だから! 誤解だって! きみが風呂場で眠り込んだから、ここまで連れてきただけなんだ。やましいことは、一切してない!」
「…私が、眠り込んだ?」
「覚えてないの? いま寝てただろ?」
サーシャは、まじまじと自分の姿を見返した。
彼女は、裸に薄い布を一枚かけただけの、あられもない姿だ(その布も俺がかけてやったものだ)。
「これは…? いったい、いつのまに?」
サーシャは、ようやく自分の状況に気づいたみたいで、目が「?」になっている。
俺は、ここぞとばかりに、
「風呂の中で眠り込んで、いまにも溺れそうになってたから、こっちに運んでやったわけで、礼を言われることはあっても、ビンタされる言われはないぞ」
と言ってやった。
サーシャは、頬を赤く染めて、俺をじっと見ている。
これでサーシャも、自分の非礼を恥じて、頭を下げるに違いない。
そう思って、自信満々に返事を待っている俺に向かって、サーシャは言った。
「どうして私がお風呂で寝てるのが、あんたにわかったのよ⁉︎ さてはあんた、覗いたんでしょ⁉︎ サイッテー‼︎」
かくして、俺は二発めのビンタをくらったのだった。