小さな吐息
横山の魔法で、風呂に浸かったまま眠り込んだサーシャを救うため、俺は彼女を浴槽から引き上げる決断をくだした。
誓って言うが、スケベ心からやるわけじゃない。
このまま、うら若い少女を、風呂場で溺死させるわけにはいかないからだ。
いや、ほんとに…。
そんなわけで、俺はサーシャの背中にまわり、彼女の両脇に手を突っ込んだ。
ジェントルマンな俺は、なにも見ないように顔は思いきり後ろに向けた。
が、その態勢でサーシャを引き上げようと力を入れたら、自分の首がグキッとなった。
痛い…。
首を後ろに曲げたまま引き上げるのはムリみたいだ…。
しかたがないので、顔は正面に向けて、何も見ないように目をつぶった。
そうして、サーシャの両脇に入れた手に力を込める。
ぐいっと引っ張ると、こんどはあっさりと身体が湯船からもちあがった。
が、目をつぶったままでは、そこから動くことができない…。
くどいよいだが、しかたがない。
俺はうっすらと目をあけた。
サーシャの細っそりした身体が、目のまえにあった。
あわてて、目をそらす。
そのまま、そろそろと脱衣スペースまで引きずって、そこに寝かせた。
サーシャは、ぜんぜん目を覚まさなかった。
全裸のまま、そんなところに寝かせておいてもかわいそうなので、近くの棚から、バスタオルのような綿の布をもってきつ、かけてやった。
すると、
「う、う〜ん…」
サーシャは小さな吐息をもらした。