これは人命救助なのだ!
横山の魔法でぐっすり眠っているサーシャは、こっくりこっくり頭をゆらして、いまにもお湯に鼻まで浸かってしまいそうだった。
横山のやつが、どれだけ深く魔法をかけたのか知らないが、まさか風呂に溺れても目が覚めない、なんてことは…。
で結局、俺はサーシャを起こすことにした。
目の前で溺れられても困るのだ。
そう。
これは、人命救助なのだ!
そう自分に言い聞かせながら、俺はおずおずと浴室に入っていって、サーシャに近づいた。
近くから見ても、やっぱり彼女は全裸だった(あたりまえだ!)。
あわてて俺は目をそらしつつ、
「サーシャ! おいっ! 起きろよ! そんなとこで寝るな!」
と声をかけた。
が、意外と横山の魔法はしっかりかかっているらしく、ピクリとも起きない。
しかたがないので、顔を反対側にそむけたまま、手を伸ばして、サーシャの頭を軽く叩く。
「おいっ! おいっ! いいかげんに起きろよ!」
しかし、起きない。
むしろ、眠りの深さはだんだん深くなっているようで、いまやこっくりしている彼女の顔は、お湯に浸かる寸前だ。
こ、これは…やむを得ない。
この状況では、彼女の身体を湯船から引き上げざるをえないではないか。
決してスケベ心からではない。
そう、(くどいようだが)これは人命救助なのだ!