スケベ心に負けて死ぬのは勝手だけどな!
「あ! ヤバイ! こんなことしてる場合じゃないんだ。じつは隣に…」
「風呂場の女の子なら、眠らせといたぜ」
「ええっ?」
「いや、そうでもなければ、とっくに気づくだろ。さっきから、騒ぎ過ぎだって、おまえ。それはそうと、おまえさ、ここで何やってんの?」
「いや…なにと言われても…」
俺は、横山にこれまでの状況をかいつまんで話して聞かせた。
ホテルから飛ばされた後、四人で小人の巣穴に行ったこと、
そこで美空さんが小人になってしまったこと、
小人の司令官ジュズガンノックの案内で、このドリム城に来たこと、
地下牢からウインガーレイ候を救い出したこと、
候の作戦で、俺たちも小人になって、サーシャを人質にしたこと、
だが、すべてはドリアムの罠だったこと、
俺たちの作戦は見事に失敗して、ウインガーレイ候が処刑されたこと、
光臨の剣の出まかせで、なんとか生き延びたこと…
すべてを話し終えると、さすがの横山も呆気にとられたようだった。
「それで…おまえはここで、あのお姫様をやっちゃおうと、彼女が風呂からあがるのを待ってたわけか?」
「え…? いや…やっちゃおうって…」
「でもさ、おまえ、それは絶対やっちゃダメだぜ」
「ええっ⁉︎ な、なんで?」
「考えてもみろよ。おまえの話が本当なら、やつらの目的は、光臨の剣を使える子どもだろ。ってことは、子種をとられたら、おまえは用なしってことじゃん?」
「た、たしかに…」
横山の言うとおりだった。
あの冷酷な、戦国武将のような思考パターンのドリアムが、孫ができたからといって、俺を家族として扱うなんて、考えられない。
なにをソワソワしていたんだ、俺は?
うっかりサーシャに手を出したら、大変なことになるところだった(いや、手を出す気なんかなかったけど)。
「なにが『たしかに』だ! まあ、おまえがスケベ心に負けて死ぬのは、勝手だけどな! それはそうと…」
横山は、急に真剣な顔になった。
「美空や高田先生たちは、まだ地下の牢屋に入れられてるんだな?」