召喚せし者
俺たちが呆然としていたせいか、もう一度、鋼鉄の騎士は、質問を繰り返した。
「おぬしら、イスマが召喚せし者なのか?」
こ、こいつ…日本語話せるのか!?
ってことは、日本人?
いやいや、今気にするのは、そこじゃない…。
俺は、ゆっくりと、騎士に気づかれないように、深呼吸した。
そして、考えた。
たぶん、これまでの人生で、いちばん真剣に…。
(こいつは今、俺たちを殺そうとは、してはいない。)
(もし殺す気なら、とっくに殺しているだろうから…。)
(なぜ、殺さないんだ?)
(知りたいからだ。)
(何を?)
(俺たちが、「イスマが召喚した者」かどうかをだ。)
でも、イスマってなんだ?
召喚した者って、なんのことなんだ?
まるでわからなかった…。
俺の頭は大混乱していた。
なにしろ、すぐ目の前には、上半身だけの無惨な姿になった落合先生が、血まみれになって転がっているのだ。
もし、ここで質問の答えを間違えれば、おそらく、俺たちは全員、殺されるだろう…。
俺は、足元に転がる落合先生の死体を、見た。
先生は、俺に二人を連れて逃げろと言った。
美空と高田先生の二人を、俺に任せたのだ。
ここは、俺がなんとかしなければ…。
騎士は、微動だにしないで、俺たちを見つめている。
気がつくと俺は、ほとんどヤケクソな気分で、叫んでいた。
「イスマが召喚した者は、この俺だ!」