辛すぎる…
みんなを残して地下牢を出るのは辛かったが、ほかにどうしようもなく、結局、俺はサーシャとともに地上に上がった。
すでに夜は明けていて、地上は光がまぶしい。
サーシャは、すたすたと前を歩いていく。
「あ、あの〜、どこに行くの?」
俺は、おずおずと尋ねた。
が、彼女は完全に無視して、歩き続ける。
食堂脇の裏口から城内に入ると、階段を上がって最上階の廊下に出た。
そこは、つい昨晩、ウインガーレイ候がドリアムに斬り殺され、俺たちが捕まった廊下だった。
俺は、昨夜ここで起きたことを思い出し、悲しみが胸にこみ上げて来た。
ウインガーレイ候とは、知り合ってたった一日の関係だったが、大きな影響を受けた気がした。
智将と呼ばれている、と言っていたが、本当に賢くて、しかも、どこか憎めない愛嬌があった。
おまけに、あの老人はイルマの祖父だったのだ。
俺は、修学旅行で泊まったホテルで会った、まだ幼さの残るイルマの顔を思い出し、ウインガーレイ候の死を伝えるときのことを想像した。
辛すぎる…。
「なにをグズグズしている。早くこっちへ来い!」
サーシャに言われて、ハッと気づいた。
見ると、サーシャは自分の部屋の扉から顔を出して、俺を待っている。
あわてて、俺は彼女のあとを追い、部屋に入った。