そこじゃないよ、問題は
「この光臨の剣の力を引き出すには、俺たち異界の人間の血が必要なんだ‼︎」
俺がとっさについたデタラメに、ドリアムは鋭く反応した。
「ふはは。面白い。きさまの言うことが真実であるならば、きさまら異界者の血をひく者がいれば、その剣は我らにも使えるわけだ」
「じゅ、呪文も必要だがな…」
「呪文ならば、あの小娘のイスマを捕らえて聞き出せばよい。なるほど、封印を解く鍵は異界者の血であったか…」
ドリアムは、何事か考え込みはじめた。
そして…次に口をひらいたとき、とんでもないことを言い出した。
「異界者よ。たとえば、おまえが我が娘サーシャと、子をつくれば、その子は光臨の剣を操れると思うか?」
「は?」
「異界者の血が、剣の力の秘密なのであろう? おまえの子どもにも、当然、その力は引き継がれるのではないか?」
「あ、あんた、なに言い出すんだ? お、俺とサーシャの子どもって、サーシャの意思も聞かずに、んな勝手なこと…」
「新久保くん、そこじゃないよ、問題は」
美空さんが、隣からそっと助言してくれた。
そ、そうだ、そこじゃない。
ん?
じゃ、どこだ?
なにが問題なんだ?
俺は、激しく頭が混乱してしまった。
っていうか、この騎士のおっさんは、なにを考えてるんだ?
「面白い! きさまらの処刑はひとまず延期としよう」
ドリアムはそう言うと、くるりと踵をかえして、あっという間に立ち去ってしまった。
サーシャも、無言で父のあとを追った。
一度も、俺とは目を合わせなかった。
俺たちは、衛兵たちに、あの地下牢に連れて行かれた。