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厄介な男

「娘が大事なら、道をあけよ!」


ウインガーレイ侯が声を張り上げた。


しかし、ドリアムは、


「断る!」


と一喝した。


「ウインガーレイよ。おまえは勘違いしているな。サーシャは、見事に任務をまっとうしたのだ。おまえを、あの牢獄から見事におびき出し、ついに処刑に足る理由を我が帝国に与えてくれたのだからな!」


この言葉に、ウインガーレイ侯が凍りつくのがわかった。


「……お主、わしを老後から誘い出したと言いたいのか?」


「いかにもそうだ」


「すべては、お主が仕組んだ罠だったと⁉︎」


「そのとおりだ」


「ふん。負け惜しみにしか聞こえんがのぉ。現に、いまサーシャを人質にしているのは、わしらじゃ。お前は、娘を見殺しにはできん。なにしろ、この世でたった一人の娘なのだからな。つまり、わしらがこの城を出て行くのを、止められはせんのじゃ」


「見殺しではない。サーシャは、すでに覚悟を決めておる。この任務で、あるいは命を落とすやもしれん、ということは、覚悟の上の志願だったのだ」


そのとき俺は、ふと雨のようなものが降ってくるのを感じた。


見上げれば、サーシャが涙を流していた。


その雫が、雨のように降り注いでいたのだ。


「ウインガーレイよ。おまえの処遇について、我らが迷っていたことは知っておろう」


「処遇? 終身刑ではないのか?」


「いかにも終身刑よ。だが、おまえのような狡猾な男を、いかに獄につながれているとはいえ、城内に飼っておくのは、危険このうえない。おまえは、死刑にしなければならない男だったのだ」


「なら、さっさと殺せばよかった。わしゃ、あの穴倉には飽き飽きしていたからな」


「それができぬから、おまえは厄介な男だったのだ」


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