人質とはなんなのか、教えてやるんじゃ
「頼む‼︎ 戦士たちよ‼︎ 我がドリアム家の誉のためにも、こやつらを殲滅せよ!」
あのクールなサーシャが、涙を流して絶叫した。
一気に、衛兵たちの雰囲気が変わった。
いまとなっては、さっきのウインガーレイ侯の挑発も、単に彼らの背中を押したことになってしまった感じだ。
「ちとまずいな…」
ウインガーレイ侯本人も、ことのなりゆきに少々焦っていた。
なにしろ、俺たちは体長二十センチの小人なのだ。
それが、まわりはすべて巨人のような衛兵たちに囲まれている。
彼らは、サーシャの檄に反応して、あきらかに熱くなっている。
こちらが、いくらサーシャを人質にしているといっても、サーシャの命を無視して襲ってこられては、ひとたまりもないだろう。
でも、本当にサーシャが死んでもいいと思って襲ってくるのだろうか?
「襲ってくるかもしれんの…」
侯は、あっさり認めた。
「こやつらのドリアムに対する恐怖は、わしの予想以上のものがあるようじゃ」
「じゃ、じゃあ、どうする? あんたの作戦、完全に失敗じゃん?」
「まあ、慌てるな。まだ手はある。わしとしても、本当はそこまではやりたくなかったんじゃが…」
「な、なにをやる気だ?」
「やつらに、人質とはなんなのか、あらためて教えてやるんじゃよ」
「え、それって、いったい…」
ウインガーレイ侯は、ニヤリと笑って、剣を持った。