ドリアム家の誉(ほまれ)
「ドリアム侯爵が、ご帰還されるぞ‼︎」
その声は、廊下に響き渡った。
俺たちの両側に居並ぶ衛兵たちは、みないっせいに顔をあげた。
さっきまで、絶望にうちひしがれていた彼らの顔に、みるみる生気がみなぎっていく。
「ま、まずくないか?」
稲田がささやいた。
「ドリアム侯爵って、あのシルバーメイルの騎士だろ? こんなに小さな身体で、あの怪物みたいなやつ、相手にできるか?」
たしかに、稲田の恐れは理解できた。
あのシルバーメイルの騎士の怖さは、俺自身、誰よりも知っている。
「かかか。心配するな! サーシャを押さえているかぎり、誰もわしらには手だしできん」
ウインガーレイ侯が、びびっている俺たちを見て、大笑した。
それから、
「城内の諸君! ぐずぐずしていて大丈夫か? このサーシャの姿をドリアムが見たら、なんと言うのじゃろうな? わしなら、姫を守れず、こんな辱めを受けさせた衛兵など、皆殺しじゃ! わはははは!」
と叫んだ。
この言葉は、廊下に居並ぶ衛兵たちに響いたようだった。
衛兵たちはいっせいに動揺した。
ウインガーレイ侯の言うとおり、あのシルバーメイルの騎士が、いまの状況を黙って許すとは思えなかった。
そのとき、
「そなたたちが名誉をそそぐ唯一の方法は、この私もろとも、賊どもを殲滅することだ! それが、私自身の名誉をそそぐ唯一の方法でもあるのだ!」
とサーシャが叫んだ。
あの誇り高いお嬢様が、涙を流していた。
「頼む‼︎ ドリムの城の戦士たちよ‼︎ 我がドリアム家の誉を守ってくれ‼︎」