裸のままで
「私は死んでもいい‼︎ 頼むから、こいつらを皆殺しにしてくれ!」
サーシャが絶叫した。
俺の身体をすっぽりと掴む護衛の手に、力が入っていく。
ぎりぎりと身体中が締め付けられ、苦しい。
まさか、この護衛、サーシャの言うとおり、彼女の命と引き換えに、俺たちを殺すつもりでは…。
だが、そうではなかった。
護衛は、急速に力をゆるめ、やがて力尽きたように、そっと俺を床に置いた。
「バ、バカな…」
サーシャは、驚愕で目を見開いている。
これまで、ほぼ無言をつらぬき、決して感情を表に見せなかった護衛役の女中が、突然泣き崩れた。
「サーシャ様…。必ず、必ずお救いします! この命に代えても! ですから、今は耐えてくださいませ!」
「そのようなチャンスが、来るはずもない。今が、ウインガーレイをうち滅ぼす機会なのに…」
そのとき、廊下に大勢の人が駆け寄ってくる音が聞こえた。
ウインガーレイ侯が、
「おい! お主ら! はやく、この娘にとりつけ。ここに残りたいのか?」
と言った。
「え? いや…とりつけと言われても…」
思わず、俺たちは躊躇した。
そうなのだ。
サーシャは、いまだに全裸だったのだ。
「せめて服くらい着せてあげましょう」
高田先生が、候に言う。
「だめじゃ! そんな隙をつくるわけにはいかん。この娘には、このまま城の外まで行ってもらう」
「ええっ⁉︎ 裸のままで?」