作戦本番!
「いよいよ作戦の本番だ。はやく浴室に戻ろう!」
稲田にいわれて、俺たちは急いで隣の浴室に戻った。
タンスの上で待っていた高田先生が、無言で指差す。
サーシャが、風呂からちょうどあがろうとしているところだった。
護衛は、タオルを持って、サーシャをじっと待っている。
俺たちがいるタンスのすぐ目の前にいた。ちょっとでも音を立てたら、気づかれてしまいそうだ。
護衛からすれば、隣室の床に香油がまかれていたのだから、何者かが侵入している可能性は無視できないだろう。
彼女は、絶対に警戒しているはずだ。
そして、どうやら彼女は、サーシャの部屋を調べることよりも、サーシャのそばを離れないと決めたようだ。
鋭い視線を縦横に走らせてはいるが、サーシャからは決して離れない。
だが、さすがの護衛も、まさか敵が小人になったウインガーレイ侯とは、思いもよらないに違いない。
そのウインガーレイ侯は、すでにサーシャの着替えの衣服が入ったカゴにひそんでいる。
サーシャは、湯からあがって、そのカゴにむかっていた。
サーシャは、あられもない姿を、おしげもなくさらしていたが、さすがに今度は、高田先生も、俺と稲田に、あっちへ行けとは言わなかった。
この作戦に、俺たち全員の命がかかっているのだ。
俺たちは、固唾をのんでサーシャを見守った。
サーシャは、護衛からタオルを受け取ると、ゆっくりとカゴに向かって歩く。
そして、あと二三歩でカゴにとどく、というとき、突然護衛が、サーシャを制止した。
「お待ちください! 念のため、そのカゴをあらためさせていただきます」