サーシャの部屋で
ウインガーレイ侯は、ついに自分の作戦を教えてくれた。
それは大胆不敵な作戦だった。
「今から、わしらは下の部屋に侵入して、サーシャを脅す。わしらは、サーシャに教会まで運んでもらうんじゃ!」
「お、脅すって、どうやって脅すんだよ⁉︎」
俺が尋ねると、
「わしらはいま、小人なのじゃ。護衛の者にバレぬようサーシャに近づき、懐にとりついて、首に剣をあてるんじゃ!」
「で、でも、どうやってサーシャに近づくんだ?」
「それは、これから様子を探って決めるんじゃ! なに、チャンスは必ずあるもんじゃ。勇気を失わない者には、な」
そう言ってウインガーレイ侯は、片目をつぶった。
なかなか茶目っ気のある王様だ。
この人が治めていたとき、この国はどんな雰囲気だったのだろう?
と、俺はふと思った。
「さあ、グズグズせずに、部屋に入るんじゃ!」
そう言って、侯は窓枠の隙間に手を入れて、出窓を持ち上げようとした。
俺たちも手を貸して、全員で動かす。
ようやく空いたわずかな隙間から、次々と中に入っていく。
中は、サーシャの私室だった。
俺たちは、窓から入ると、部屋の端にある衣装ダンス上に降りて、身を隠した。
なにしろ、巨大な衣装ダンスだ。しかも、タンスのいたるところに凝った彫刻が施されているものだから、身を隠すにはちょうどよかった。
サーシャは、部屋の真ん中あたりにある椅子に身を沈めて、目を閉じていた。
ね、寝ている⁉︎
いきなりチャンスか?
と、俺は思わず緊張したが、侯に腕を抑えられた。
よく見ると、部屋の入口脇に小さな椅子が置かれ、付き人らしい女性が、静かにすわっていた。
「ど、どうするんだ⁉︎」
俺が尋ねると、
「待つんじゃ! 待っておれば、必ずチャンスは来る!」