始まりは料理から
面白い物が書いてみたくて始めました。よろしくお願いします。
夏休みの昼頃、部活を終えてやっと帰ってきた。もちろん、我が家にだ。
家の両親は今2人揃って仕事に外国に行っているので、家には居ない。
現在家には俺、秋月恵奈と、兄、秋月一色しかいない。
念のために言っておくが、俺は女ではない。
女のような名前をしているが、性格も、見た目も完全なる男だ。
決して、気にしているとかそういう訳ではない。
カギを開け、ドアを開くと我が家の玄関。靴が綺麗に揃えられていて、土や砂もない、綺麗な玄関だ。
「ただいまー!」
家中に響くような声で言う。数秒待たずに、返事が返って来る。
「おかえりー」
低く安定した声は、心を落ち着かせてくれる。
声の主は台所で片手に本を、片手にフライパンを持っている。兄、秋月一色
だ。
兄は非常に繊細で、自分を大切にしてくれる。所謂ブラコンというやつかもしれないが、そんなものは恵奈には関係無かった。両親は主に仕事なので、兄は家族との触れ合いが少ない家で、恵奈の唯一の心のよりどころなのだ。
なんでも相談に乗ってくれ、一緒に悩んでくれる。いつも励ましてくれて、気を遣ってくれる。
それだけでなく勉強も出来て、小さい頃から空手を習っていた。運動神経も抜群だ。
文武両道、人格者。爽やかで、文句なしの自慢の兄だ。
「ご飯ができたから、運ぶの手伝ってくれるかい」
ただ、そんな完璧な兄にも唯一の欠点があった。
「どうだい恵奈、おいしそうだろう?」
料理が、極端に下手な事だ。
「お兄ちゃん頑張って、チャーハンを作ってみたんだ!どうだい、おいしそうだろう!」
一体、これのどこがチャーハンなのだろうか。米は真っ黒に焦げていて、なぜかそのままのトマトがのせてある。
真っ青で、異臭を放っているが、形状がトマトなのでかろうじてトマトだと言う事が分かった。
しかし、腐っているわけではないはずだ。一体どうしたらこうなるのだろうか。
「兄さん、料理は俺が作るからいいって言ったじゃない……」
「お兄ちゃんは、部活をがんばっている恵奈のために頑張って作ったんだ!遠慮せず食べるといい」
いつも世話になっていて、尊敬している兄だが、さすがにこの料理(異物)は食べられない。
いつか料理工程を見てみようと思った。いや、食材がもったいないからやめたほうがいいかもしれない。
「兄さん……気持ちは嬉しいんだけど………」
おそらく苦笑いでかろうじて発した言葉だった。
この兄の料理事件は今日が初めてではない。俺がまだ小学生で、兄が中学生の時、一回作っていた。
俺は当然拒否したが、兄が悲しそうな顔をするので、俺もついに折れて食べてしまった。
正直、おいしくなかった。けれど、頑張って皿をたいらげ―――数分後には気絶だ。
そして、俺が中学生の時も。いつも、俺が料理すると言っているのにも関わらず、兄はまた料理を作った。
今度も俺が折れて、たいらげ―――数秒後に意識を持っていかれ、病院のベッドの上だ。
そして、今。俺は高校生で、兄は大学生。どこの大学かはあえて言わない。
黙って料理を見つめていると、兄が段々悲しそうな顔へ……。
今回はどうなるのだろうか。この流れで行くと、今回こそ死んでしまうのか。
今までの症状の共通点は、意識が無くなるのと、内臓を直接握られたような痛みが走るという所だ。
俺は覚悟を決め、料理を平らげる。
次回からドンドン主人公達の情報が出て来ると思います。
特に難の無い、平和な作品になると思います!