新キャラ登場。
俺が理解していることは、換金するのはコロ、
ゲーム内でアイテムとか購入するのは通貨。
(円とかドルといった名称がなく、
ただ金貨、銀貨と呼ばれているのはどうしたものか?)
ということだけだ。
一人運営のあり方について考えていると、不意にモニターの中に見知った鎧が映り込む。
と、その鎧を着た男がこちらに向かって歩いてくる。
「リクじゃん、珍しいねベガにいるなんて、ゲージ観戦かい?」
聞きなれた、ちょっと低めの男の声が聞こえた。
鎧の男は、深紅のレザーアーマに深紅のラウンドシールドを左手につけており、
頭部を保護するヘルムはつけていない。
ラウンドシールドはシールドとして機能するのかというくらい小さく、
直径がアバターの肘から指先までしかない。
下半身も深紅の脛あてをつけているが、特徴的なラウンドシールドのせいで、印象は薄い
腰周りを覆う鎧は存在せず、中途半端な印象を与えている。
「ツルカメさん、久しぶりです。こんなところで会うなんて奇遇ですね。」
「あぁ、弓の手入れに来たんだよ、ついでにゲージ見物ってね。」
「あれ?ツルカメさんの弓ってベガで買ったんですか?」
「ちがうちがう、あれ特殊だから、研ぎ師がここしか居ないんだわ。」
「良い職人さんなら紹介してくださいよ。プレーヤーですか?」
「いいけど、親方気質っていうか、もろ職人だよ。ちなみにNPCだけど...親方だ。」
「それは、是非お近づきになりたいですね。腕の良い職人さんは貴重ですから。」
ツルカメさん...名前が残念だけど...は、
弓の両端が剣になっている特殊な武器を使っている。
ソードボウというらしい。
市販の武器事典では見かけない形状なので、鉄牢オリジナルなんだろうな。
遠距離、から近距離までカバーする特殊武器だが、命中率が低く、
まともに使えるようになるまで時間がかかったそうだ。
モンスターのドロップアイテムだったらしく、市場には売られていないらしい。
以前商人ギルドで価値を調べてもらったらしいが、
いくらの値がついたのか教えてくれなかった。
「刃の研ぎを頼んだら、1日草刈を手伝わされたよ。」
「草刈ですか?それってどうやるんですか?」
「草刈スキルって言うのを親方にもらって、フィールド画面で、
赤いドットをひたすらアタックする。んで、それを延々3時間...修行だったよ。」
「お疲れ様でした。もう弓のメンテは終わったんですか?」
「いや、4日ほどかかるって言われた。だから、ここでゲージ見学。」
「4日って言うと結構かかりますね。16時間?」
「そそ、だから久ぶりにサブウエポンのショートソード「じゃが丸君」の出番なんだなw」
「じゃが丸君ですか、そうですか、」
残念なネーミングだ相変わらず。
「うん、ところで、リクはアルタイルに篭もってるかと思ったんだけど、
ゲージ目当てでもないでしょ?」
「今までゲージって見たことなかったんで、見物です。」
はい、ごまかしました。ハジの情報は200円も出して買ったんですから、いえません。
「じゃぁ、一緒に見ようか?稼げるチャンスだし。」
じつは、すでに療養施設には足を運んでいた。
が門前払い、そんな男は居ない、来ても居ない
の一点張りで、施設の門番に中にもいれてもらえず...
あの情報屋、覚えてろよ ゴルァ
とりあえず、明日出直そうかと思っているので、朝待ち状態です。お疲れ様です。
「いいですね、ここの楽しみ方ってどうするんですか?」
「んーはっきり言って賭け事かな? ほら、鉄牢ってRMTを公然と謳っているけど
法律的にゲーム内でカジノとかってできないじゃん、
運営側としては、プレイヤー参加型のイベントを行っているってスタンスで、
後はプレイヤーの自己責任って感じ、NPCは世界観にあわせた演出ね。」
「何でもありですね、マギウス社。」
「おかげで、こっちも稼げるってわけだねw、リクは通貨はある?」
「はい、持ってますけど。」
「じゃぁ、ちょっとだけ運試ししようか。」
モニターの中のツルカメさんの顔は変わっていないが、
なんだかニッコリされたような気がした。声が嬉しそうだった。
「今回の参加者は、8人中6人が前回も出場してるんだ、
新参者2人の内1人は前々回の参加者、まったくの新人は1人ってことだ.....」
ゲージはマギウス社が、職業ごとに企画するイベントだ、
今回の盗賊用イベントは、迷宮を模した罠満載の迷路をプレイヤーが走破できるか、
出来たとしたら誰が一番かを競う。
剣士用のゲージは、コロシアム風に戦闘だし、弓士用も射的大会だ、
面白いのは商人用のキャラバンと呼ばれる4都市を結んで行われる貿易レースくらいかな
それらが現在公開されている各都市のどこかで、毎月一回ローテーションでおこなわれている。
「リク、聞いてる?」
「あ、すみません、なんですか?」
「誰に賭ける?」
「えーと、誰がお勧めですか?」
「聞いてなかったでしょう。お勧めは、前回参加者のマイツと、かなもん
この二人は前回もゲージを脱出している。
あと、今回の新人 チャーリー君 前々回の参加者レオナルドは実力はあるが、
難しいだろうな。」
「そうですか、だったら マイツとチャーリー君をそれぞれ銀貨3枚づつ買います。」
「じゃぁ あそこのNPCの所で買おうか。」
テーブルを出して、その上にオッズ表を飾った中年男から、銀貨6枚分の掛札を買って、
リクとツルカメさんはすり鉢状の縁に当たるゲージから最も遠い一番上の席に腰掛けた。
ここからだと、参加プレイヤーは子供くらいの大きさだ。モニターの解像度が低いため、
参加プレイヤーが何をしているか迄はよくわからない。
オッズはマイツが6倍、チャーリー君が4倍だった。
勝った場合の払い戻しは、商人ギルドで行われるらしい。
ツルカメさんは、かなもん とチャーリー君を銀貨5枚づつ買っていた。
ちなみに かなもん のオッズは2.5倍だった。
「ツルカメさんは職業何なんですか?」
「あぁ 僕は弓士だよ。」
「弓士って接近戦出来るんですか?」
「剣士ほど接近戦に特化してはいないけどね、スターボウをドロップしてから
スキルとして剣技と楯を伸ばしているから、それなりには戦えるよ。
あ、それより、そろそろ始まりそうだよ。」
あの武器、スターボウって名前なんだ...なんだかホッとした。
何かと残念なツルカメ氏登場です。