そしてベガへ
MORPGは専門誌が発売され、学生、社会人を中心に、
男性だけじゃなく女性も巻きこんで市民権を得てきている。
その中にあって、ある種異質なMMORPGがある。
マギウス社の配信する「アイアンゲージ」 通称、鉄牢だ。
ゲームのシステムは特に特筆するべきものは無く、
選べる種族、職業も他のMMORPGに比べ、むしろ劣っている。
だって魔法が回復職しかないMMORPGってどうよ?
弓以外の遠距離攻撃手段がないって、ありえねぇ。
しかし、毎号専門誌に特集ページが組まれるほどの注目度を誇っているのは、
極端な秘密主義と、リアルトレード公認、AIとは思えないNPCの対応、
そして、ネットに潜む一攫千金を前面に押し出した、
企業姿勢の賜物だろう。マギウス社 超スゲー
アイアンゲージは5年前、迷宮探検をメインにすえた探索型MMORPGとしてスタートした。
それは今も変わってはいない。
ただし、迷宮がどこにあるかを探索することから始まるMMOはどうかと思うぞ。
当然?グランドクエストらしいものも、いまだに存在しない...
始まりの塔で、本来あるはずのチュートリアルだって、
偉そうなタキシードを着た中年の親父に、急かされながら、
アバターをつくり、やっと終わったと思ったら、
「知りたいことは、町の皆に聞くと良いぞ。では、がんばってな。」
の一言で終わったときはどうしようかと途方にくれたが、
塔を出た後に知り合ったプレイヤーに
有志によるHP(@ウィキ)の存在を教えてもらった事で何とか続けられた。
きっと心が折れたプレイヤーも多いのでは?
結果的にNPCの商人に聞いて色々教えてもらったのでチュートリアルは有効だったが、
これでいいのかマギウス社と本気で頭を抱えた。
ちなみに教えてもらった@ウィキは当然ワンクリック課金アフェリつきだった。
毎日クリックしてますよ今でも。
本当に色々なことが書かれていた。
モニターの切り替え方から、ボイスチャットの方法まで。
それまではただのチャットしか使えなかったし。
ボイスチャット まじらくちん。
NPCとの会話も違和感がないのはびっくりだけど。
彼らに操作関連の質問とかすると
「これだから冒険者は、訳がわからん。」
とか言われるんだよね。
チャットしてた時は言葉が話せないかわいそうな人状態だったし...
俺はボイスチャットを覚えてからギルド登録もできたし、
装備の購入に値切りもできた。
NPCと値切り交渉、これってすごくねぇ?
そして立派に成長した俺は無事買い物を済ませ、サーバーベガへの転移門の前にいる。
MMORPGでサーバーというと通常はプレイヤーの分散を図りシステムに対する負荷を減らすことを前提として作られた同一環境を指すと思うんだけど(間違ってたらごめん)
鉄牢においては、まるっきり別物だ。
3つのサーバーの環境が全く違うんだから。あら不思議。
見つかった迷宮も、存在する都市も、そして恐ろしいことにpvpのあり方も、まるで違う。
ここ、ベガでは、転移門は3つの街につながっている。
アルザス、ミルネク、ヨルムだ。どれかを選び移動できる。
中央大陸の東寄りに アルザスという街がある。
断崖の底にある小都市で、
アイム山脈をバックに作られた山城を中心に周りの集落を取り込んで作られた都市だ。
もともと山脈の麓ということで豊富な木材を使い街を囲む城壁も木で出来ている。
そこから西に向かう街道と呼ぶにはささやかな獣道を歩くと
大陸の中央北部にミルネクの街と呼ぶにはチョット小さいが、農耕が盛んな街だ。
そこから南にくだるとちょうど大陸の中央付近に今回の目的地ヨルムの街が見えてくる。
ヨルムはこの世界有数の医療都市らしく、領主が医療に積極的に力をいれているらしい。
そして、現在この街はゲーム時間4年に一度の盗賊の祭典、
ブロンズゲージが行われようとしている。
今回はゲージ見物ではなく、情報収集が目的なので、わかり次第移動することになる。
まぁ1ヵ月後にはまた別のイベントがあるしね。
アイアンゲージ開発秘話―MMOマガジンより抜粋―
司会「マギウス社の広報に問い合わせても、
何の反応もないアイアンゲージですが、
MMOマガジンの業界のツテを手繰り寄せて
今回は開発部のRさんと、Bさんに
内緒でインタビューに応じていただきました。
本当にありがとうございました。拍手 パチパチパチパチ」
R氏「内緒ですのでww」
B氏「よろしくお願いします。」
司会「えーとまず始めは、
とてもAIとは思えないNPCの会話についてですが、
開発上の苦労話お聞かせ願えますか?」
R氏「あぁ えーと、それはですね。」
B氏「実はそこの部分、外注なんですよ、
メインフレーム周りとAI部分は、社長の独断で...」
司会「え、そうなんですか、
他のMMOに比べても類を見ないほどの完成度というか、
実はバイトさん雇って個別に対応させてるんじゃないかってほど
人間臭い対応ですよね。
ぜひ開発秘話を聞きたかったのですが...」
R氏「すみません、アイアンゲージの開発は社長の独断が
結構大きいんですよね。」
B氏「そうそう、本来なら大々的に行うはずの
新ダンジョン追加イベントだって内緒だから」
R氏「えーと、困ったなぁ、それ言っちゃうかB、
リリース時期はまだ未定です。」
司会「本当に未定なんですか?Bさん」
B氏「いや、実は...
R氏「未定です。ですが期待していてください。」
司会「近日新ダンジョンリリースですか、楽しみですね。
そういえば、Bさん、アイアンゲージって
何で攻撃魔法が存在しないんですか?」
B氏「ですよね、社長の頭腐ってるんじゃないのかなって思いますよ。」
司会「というと?」
R氏「え~補足しますと、弊社のアイアンゲージは
社長がプロデュースしており、
その世界観、3つのサーバーの特色、職業、システムその他全て、
社長のコンセプトをデーター化しています。
しかし、社長本人は、MMOについての知識もなく、
当然他社のMMOも知りません。
それが、ある意味、アイアンゲージの特徴といっても
良いのかと思います。」
B氏「売りといえばRMTリアルマネートレードだろ!」
司会「そうですね、実は私が個人的に不思議なのは、
マギウス社さんはアイアンゲージで採算が取れているのですか?
ということなのですが...」
B氏「まぁ社長の肝いりで行ってるやつだからね、
採算度外視って感じかな?
でもアイアンゲージの配信行ったことで、
社の知名度が上がって本業の売り上げは伸びてるし、
広告収入もそれなりに入ってるから、いいのではないかな?」
R氏「無料で参加できますが、スキルは購入制ですし、
アイテムの販売についても、3%の売買手数料をいただいています。
とんとんぐらいでしょうかね」
司会「ありがとうございました。次回もよろしくお願いします。」