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第参話~変ったこと~

「……あ……?」


――どうやら永遠の眠りでは、なかったようだな。


 目を覚ました場所は、前起きた場所と同所、つまりカイルの部屋=俺の部屋ということになる。


「とりあえず無事だったのか」


 よかったと一安心、一応妹のためとは言えど命が惜しくないと言えばウソだ。


――なんだか体が痛いな……


 体をベッドから起こし立ち上がると、なぜか体のあちこちがピキパキと痛いのはなぜだろうか、魔力を消費しすぎたせい?


 カイルは少し思案したが、すぐにどうでもよくなって、部屋を出た。


 だんだん頭がはっきりしたところで、ノアの容体が気になったので、昨日の部屋へと向かうことにした。


――まぁ原因は取り除くことはできたんだから、死んじまったなんてことは――


 そこまで考えて少し悪い考えが過る。


――……いやでも、もしそうだったとしたら両親が黙っているわけがない、うん。


 頭をなんどか頷かせ、ないと自分に言い聞かせる反面、カイルの足取りは確実に速くなっていたのだった。


 

「いないな……」


 昨日と同じ部屋へと訪れてみたが、ノアの姿はどこにもなかった。いくら治ったからといって昨日の今日で遊びに出かけたのだろうか。


 いくらなんでもそれはないか。だがそんなことよりも、今現在、カイルはすごーーく気になっていることがあった。それは、


――部屋、変わり過ぎじゃないか?


 昨日来た時と比べると、ベッドと机以外全ての位置と物が変わっている、なんか前よりも女の子らしさがあふれ出ているキュートな部屋に変身していた。


 小首を掲げながらも、このままここに居ても意味がないことに気付き、すぐに部屋を後にする。


 とりあえず親父でも母さんでも見つけて、どうなったのか話を聞こう。


 そう考えたカイルはそこまで広いとも言えない家の中を捜しまわった。リビング、キッチン、和室、親の寝室、トイレ。


 だがどこを探しても人っ子一人見つからない。


 どうやら出かけているみたいだけど、可愛い可愛い息子をおいて3人仲良く出かけるなんてひどい奴らだ。


 とりあえずノアの安否が気になるので、外に出てみたが、3人分の靴が消えていたのをみると回復したのだろう。


 とはいっても一人ではやることがないので、村を周りながらノアを探すことにした。


 それにしても記憶がよみがえってから初めて村を歩いてみたけど、カイルの中にある村とは大分違うのが気になるが、まぁ形自体は余り変わらないので、気にしないことにする。


 見たこともない小物ショップのような建物や、記憶と変わらない八百屋的などを見ながら村を歩いて廻る。村と言ってもそこまで大きい村ではなく、人口は百五十人くらいので、村全体は大きく一周するのに1時間ちょいくらいで済んでしまうと思う。


 村の外は、街へと続く道以外は森で囲まれている。電気なんぞ流れいるわけもなく、基本は自給自足、野菜は自分達で育て、豚や牛に似た家畜を飼い、村の中心を割るように流れている川で水を補給している。


 やっぱりコンビニとかの便利所はないよな~とか考えながら村を歩いていると、いつの間にか一周し終えており、商店街の場所に位置する通りに戻ってきてしまった、それにしてもさっきから周りの人達がすれ違うたびにこちらを擬視していたのは気のせいだろうか?


 周りからの視線を気にしながらも、ノアを探して回ったが、見当たらないので、仕方なくカイルは村の小物ショップのような場所を見学していくことにする。

店には沢山の木の置物や、ブローチやネックレスに、釣り竿のようなものまで置いてある。


「へ~、色んなものが置いてあるんだな」


「おうおう、見てって見てって! どれも俺が作った自信作ばっかだぜい?」


 前世の自分と同い年くらいで、髪がぼさぼさしていて、少しやぶけた茶色い民族衣装のようなものを着ている男が、にかっと人の良さそうな笑顔でいった。


 この店を開いている人だ。


「これ全部あんたが? へ~すごいな」


「まぁな」


 商品をざっと見渡しても、どれもこれも細かい作りをしているのが良く分かる。


 前世の自分と同じくらいの青年が、こんな器用なものを作れるなんてすごいな、と素直に感動した。


 並んでいる商品の中で、一際細かく作られているであろうネックレスを見て考える。


――どうやったらこんな細かいネックレスみたいなの作れるんだ? 


 大きな蒼い輝きを放つサファイアのような石が詰まった木に、糸が通っており、更に細かい宝石のようなビーズが糸を通り、一つの作品へ完成しているようだ。


「すげぇな」


「お、そういえばお前初めてみる顔だな、街の人間か?」


 店員の男が俺の顔を覗きながら聞いてきた。


 カイルは首を振って否定する。


「いや、この村の者だけど」


「そうなのか? 俺も最近この村に来たんだが、まだ会ったことのない奴もいたんだな」


「あ~たぶん俺最近本ばっか読み漁ってたから、村にあまり外に出てなかったかも」


「ふ~んそうなのか? んまぁいいや、俺はマイク、お前は?」


「俺はカイルだ」


「そうか、んじゃあカイル、これ持ってけ」


 そう言ってマイクが投げつけてきたのを、反射的に右手で受け取り、見てみる。先程じっと見ていたネックレスだ。


「いいのかこれ? ずいぶん高そうなもんみたいだけど」


「いいっていいって、どうせ誰も買わなそうだし、そんなことより、新たに出会うことの出来た友人に餞別ってことで」


――友人……か、なんかいいな、そういうの。


 カイルはにやけそうになりながらも、我慢しながらお礼を言う。


「そういうことなら、ありがたく頂戴しとくかな」


「おう」


 受けとったペンダントを大切にポケットへとしまう。


――そうだ、もしかしたらマイクならノアのことをなにか知っているかもしれない。


 カイルが口を開けて聞こうとしたその時、今まで静かだった周りに急に人が集まってきて、突然わいわいと騒ぎだした。


「な、なんだ突然?」


「お、そういえばもう戻ってくる時間か」


「戻ってくる時間?」


――なんのことだ?


「あれ? お前もしかして知らないのか? この村から街の魔法学園へ入学が決まったって」


「魔法学園?」


――はて? そんな学校あっただろうか?


 記憶の中の本を広げてみるが、そんなことが記された本は読んだことないし、噂も聞いたことがない。


「でも学校だろ? 入学するだけでこんな騒ぎになるのか?」


「まぁそりゃあな、魔法は誰でも簡単に使えるってわけでもないからさ、それにこないだ行われた仮入学の時の魔法試験で、かなり上位の方に食い込んだらしくてな。みんな村の誇りだとかいってはやし立ててるんだよ。まぁ彼女は困ってるみたいだけどな」


――彼女?


「その魔法学校ってのに行くのは女なのか?」


 聞かれたマイクは、カイルの質問に対して目をぱちくりさせた。


――…なんか変なこと聞いたか?


「何言ってんだお前? この村のアイドル的存在だぞ? 本当にわからないのか?」


「あ、ああ」


「ま、まじかよ……」


 マイクは信じられねぇみたいな顔をしながらこちらを直視してくる。というかこの村にアイドル的存在がいたことすら知らなかった。


 ほんと、なんか変だな。俺の記憶にある情報が大分間違っているみたいだ。


「んで、その子の名前は?」


「あ、ああ彼女はすぐそこに住んで――」


 うおぉおぉおお、と村人が急に歓声を上げた。


「お、帰って来たみたいだな、ほら」


 マイクは顎で、遠くから歩いてくる複数の人を指す、顔は良く見えないが、その集団は商店街の真ん中を歩いてき、村人が「おかえり~!」とかいいながら道を大きく開けている、まるでカーニバルでも見ているかのようだ。


 特に気にならなかったので、村人をかき分けてみようとせず、なんとか間から覗きみる。そしてカイルは衝撃を受けた。


 複数人が居たので、誰がそうかわからないと思ったが、すぐに中心を歩く彼女がそうだとわかった。


 風に流れる黄金の長髪に、小さい顔立ちの中にある、優しげな碧色の瞳、全体から滲みでる気品の中にある、可愛らしい独特な雰囲気。つい妖精かと見間違えてしまった自分が恥ずかしい。


――というかめっちゃ可愛い、うん。なんかもう抱きつきたいくらいに、そしたら変態だけど。


 そんなことを考えていると、ようやく当たり前の疑問が思い浮かんだので、振り向いてマイクに確認してみる。


「なぁ、あの周りにいる奴らはなんなんだ?」


 さっきからハエのような男子が十人近く彼女の周りうろついている。なぜハエにたとえたかというと、彼女がすごい嫌がっているから、うざがっているから。表面上は愛想笑いを出してるけど。


「ああ、あいつらは彼女を狙ってる、来週から一緒の新入生さ」


「魔法学校のか?」


「そそ、なんでも金持ちの連中ばっからしいぜ」


――なるほど、どおりであいつらの服がキラキラ眩しいわけだ。


「ま、そんなことどうでもいいんだけどさ。なぁなぁそれよりあの子! 名前なんて言うんだ?」


「ああ、あの子はあああああぁぁぁぁ!!」


 マイクは突然大きく口を開けて大声を出した。


「おい、ああああじゃなくて早く教えろよ」


「カイル! 後ろ後ろ!」


 慌てたように何度もカイルの後ろ側を指さすマイク。なんなんだよと思いながらも、ゆっくりと後ろを振り返ると、何かが突撃してくるのが見えた。


「がはぁぁ!」


 ドンッ


 大事なお腹に突然ロケット頭突きを食らったカイルは、その衝撃で体が後ろへと引っ張られていった。


「お兄ちゃん!」


 黄金の妖精と共に、


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