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1話:創世神という名の母

すべての母が、人のように苦悩し、茨を歩む物語です。

たとえ神であっても、母であるなら悩む。

その迷いに光を当てました。




私は創生神。全ての生物の祖…いや、全ての争いを生んだ神といった方がいいかもしれない。


私は子供達に美しさを理解してほしくて、知恵を与えた。でも子供達は争いのためにそれを使った。

私は子供達に美しい世界を眺めて欲しくて、目を与えた。でも子供達は睨み合うためにそれを使った。

腕を殴り、口で罵り、心で憎む。私が望んだのは、正反対の世界だった。


全てを思うままに生んだ私は、最近少し悩んでしまう。私は間違ったのだろうか。知能を与えすぎたのだろうか。それは母として考えてよいことではなかった。

だが知恵は、人を自身の想いで愛するために必要だった。


私は、どうすればいいのか分からない。滅ぼすか。見守るか。塗り替えるか。私の愛は、皆に届かないのか。

創生神としての威厳など、悩みの前では無力だった。

今日もそんな思いを巡らしながら、天界と地表を眺める。天の子は地の子を見下し、地の子は同種族で争っている。

誰かに相談したいなど、神に似合わぬ心を持ってしまったのは失敗だったか。


しかし、見下す天の子も、争う地の子も、行っているのは老いた者たちだけだった。若い子供達は純粋で、汚れを知らず、天地関係なく一緒に遊ぶ。その姿を見ると、自然と口元が緩む。

昔は皆、皆で遊んでいたのに。


皆を変えてしまったのは、戦の子だった。人に戦いを仕掛けたのだ。私はその子を責めれなかった。戦そのものに「戦うな」なんて可哀想だったから。

人の子を助けられなかった。それは彼らの自立を崩し、私の力は周りに被害を及ぼすから。戦の子は戦地に生きがいを求め、人に争いを仕掛けた。その戦を体験したから、皆は歪んでしまった。


でも、私は気付いていた?いや、思っていた。あの子はそんな子じゃないはずと。元のあの子は、泣き虫で、私によく甘えん坊だったと。

戦が起きた時、心がざわついた。心当たりがあったからだ。

あの子に弟妹ができた頃、突然、私からの愛を受け取ってくれなくなってしまった。それは寂しさからくるものなのか、強い兄でありたいという覚悟なのかは私には分からなかった。


私が作ってしまったあの子の心の隙間から、零れたものは、やがて「戦」となり、人の世に落としてしまった。


人は弱い。しかし生きる精神力は何よりも強かった。神は強い。だから人間を侮った。神は人を滅ぼすつもりだったのか、権能を使うまでに至った。だが人は滅びなかった。例え祈る対象が敵だとしても。


昔、愛の子に尋ねたことがある。

「私は愛を産んだはずだった。けれど、育ったのは憎悪だった。どうしてなの?」

愛の神に

「そんなことも知らず、愛を望んだのですか、母よ?」と笑われてしまった。

しかし愛の神は、こんな母にすらも優しく微笑んでくれた。

「母よ、貴方の私達を見る目は愛そのものです。だが愛とは友情であり、認め合う心です。認めるためには、競争が必要なのです」

「人と神は争うことで互いの強さを知った。神は人の精神力を、人は神の力強さを。老いた者達は醜い所しか知らないのではありません。知り、認めているのです。しかし、ただ『負けたくない』だけなのです」


私は正直に言うと、何をすべきか、まだ分かっていない。母は子の行動を見守り、誤った方向に進む可能性があれば、立たせるのが役目だ。

今、世界の進んでいる道は、私の目には歪んで映る。ならば正さねばならぬ。また幼き頃のように、子供達を、私が導かねば。私の正しさも愛故に歪みがあるかもしれない。それでも、私は正しい道へ導きたい。


私は戦の子に謝らねばならない。私はあの子の帰れる場所を作ってあげなければならない。私は…私は創造神だ。でもその前に子供達の帰る場所であり、母だ。それは自立した子供でも変わらない。独りぼっちの子供は残さない。


さぁ…子供達を導きに行こう。

お読みいただき、ありがとうございます。

それぞれの正義と愛、そして戦。

彼女らは認め合い、赦し合うことができるのか。

それでも母は、皆を愛す。

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